short story(JAPAN)
□猫になった君
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『ご主人様、ご主人様!!』
「ん?どうしたと葵??」
『またやつが来ていますよ?』
「あー、門前払いしとってー。」
王国一の大魔術師大吉とその使い魔葵。長身で塩顔系イケメン、黒いローブで身を包み、異様に長いお玉で只今魔法薬精製中の大吉と一見普通の少女であるが、中にふわふわ浮き頭に小さな黒い角2本とコウモリの羽が生えている葵はとても不安そうな顔色で彼を伺っていた。
二人は今日も平穏に仕事をノコノコとしていたのですが、とある人物が尋ねてきた事により暗雲が立ち込めようとしていたのです。
『でもご主人様、もう入ってきてしまったんですよ汗』
「はぁー、強行突破されたと?」
『...はい』
「後で結界を強いのに変えとくばい。」
ッバン!!
「大吉!!今日も来てやったぞ!!」
「...っち」
ゲンナリとした二人の元に、勢いよく入ってきたのは[自称大吉のライバル]上級魔術師の坪平であった。(大吉は特上級魔術師であるため、遥かに坪平より上である。)
「あ、今舌打ちしただろ!!なんで舌打ちすんだよ!」
「うるさいよ?(黒笑)」
「すいません...」
見栄っ張りでナルシストであるのに打たれ弱い坪平。漫画でよく出てくるいい死に方をしないタイプの彼は、色々あって大吉を偵察、もといいストーキングをしているのである。
「で、今日はなんの薬作ってるんだ?」
「教えるわけなかろ。」
「えー教えてくれたっていいじゃん!ねー葵ちゃん?」
『え!?あ、そ、そうですね汗』
まさか自分に振られるとは思っていなかった葵は、あまり話を聞いていなかったため曖昧な返事を返してしまった。
「あれー、もしかして葵ちゃん話聞いてなかったー?(ニヤニヤ)」
『え、き、聞いてましたよ汗』
「じゃあー、何の話してたか教えてくんないかなー?あ、あと大吉が何作ってんのかと。」
ジリジリと距離を詰められ、それに比例して下がる葵。大吉と彼の友達の華丸以外の男性が苦手な彼女は、近ずかれるのが好きではなかった。
いつの間にか壁に追いやられ、あと数十cmで触れ合う距離、というところで坪平の前ギリギリにナイフが飛んできて刺さった。何事かと思い、それが飛んできた方向を見ると大吉がドス黒いオーラを身に包み、満面の笑みでこちらを見ていた。
「あーもうちょっとだったのにー。」
その笑みは口元は笑っているが、目が笑ってないというやつで、その目は爛々と坪平のことを捉えていた。
「それ以上葵に近ずくと、顔に穴が空くじゃすまないとよ...。」
笑みは消え、真顔でそう言う大吉。狂気と殺気を含ますその顔に、野性的本能で葵から数十mほど飛び退く坪平。葵はカタカタと震えながらも、内心助かったと思っていた。
「そ、そんな大吉先生の大切な葵さんにぼくが近距離までちかずくわけないですよ汗」
「...そう。」
まだ殺気は残したまま、普段の人の良さそうな顔に戻った大吉。彼を怒らしたら怖い、と華丸が前に言っていたように彼は本当に怒らしてはいけない。
(まあ、なかなかのことがない限り怒るタイプではないが)