短編
□お前が俺で私が貴方で俺がお前で貴方が私。
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と、同時に、目の前の“俺”もとんでもなく動揺していた。
挙動は、どこをどう見てもアクアそっくりだ。
「あえ、え、ちょっと、なんで私が目の前に――!?」
「……なんだと」
俺(アクア)の言葉が少し引っかかり、慌てて自身の身体を見る。
腰まで伸びる長い髪、すらりとした脚、そして極めつけには豊満な胸部。
なるほど、と無意識に思ってしまった。
「……」
完全に思考がフリーズしたアクア。普段なら可愛いと思うのだろうが、姿は完全に俺なので少しげんなりとしてしまう。
アクアも同じだろう。
「……状況を整理しよう」
「はい……」
ひとしきり二人で鏡を見たり身体をチェックした後、とりあえず落ち着いて椅子に座った。
頭を抱えて、アクアは下にずれた俺の眼鏡を不器用に直す。
「どこぞの映画よろしく、俺たちは入れ替わったわけだが、昨日何か変わったことは?」
「……ううん、特にないよ。強いて言うなら、いつもより外に出ててたかな……」
「ふむ……」
不測の事態に、原因不明の入れ替わり。
「でもこういうのって一日経てば元に戻るとかない?」
「ないと言い切れないが、あまり楽観視できないだろう」
それもそうだけど、とアクアは不安げな顔をする。
こんなにも表情豊かな俺を見るのは新鮮でもあり、気恥ずかしくもある。
と、まあ現状は様子見をするしかない。
俺たちにはもう一つ重大な問題がある。
「……今日は王都城で会議があるのだが」
「私も今日はアダマスで仕事……」
………………
………
…
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