短編

□包丁の正しい使い方。
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「あったあった!あそこ!」








先頭を切っていたプロンプトくんが前方を指差す。標の優しい光が目に沁みそう。



とはいえ、ようやく晩御飯だ。






「よし、ならすぐに食事を――」
















「っ、待て!!」


















「わっ……!」




グラディオさんの突然の声。



それと同時に、標と私たちの間に入るようにして黒い霧が現れた。






これは――







「シガイ!?」


「嘘、今から!?」


「……どうする」


「倒さなきゃ通れねえ、やるぞ」


「とーぜん」




皆が次々に武器を手に取る。私も右足を前に出して体勢をとった。



コンディション的には最悪だけれど、やらないと……。








影のようなもやが晴れる。








そこには――。

























「…………」












「……あれ?」





ちっちゃい。





いや、ちっちゃいシガイがいたのはいつものこと。よくいるし。






ただ――。






「一匹……?」


「っつーか襲ってこねえな」


「なんか可愛いね」


「おい、シガイだぞ」


「あ、包丁持ってる。ということはイグニスとかアクアさんの仲間?」


「なわけねーだろ」






私たちがこうして言い合っている間にも、シガイはこっちを向いたまま襲ってこない。





なんだか、反応に困るシガイだなあ……。









「敵意がないのかな……」


「シガイなのにか」


「うーん、でも何でも例外は付き物だから……」


「それもそうだが……いや、敵意がないのならこのまま標まで行こう」


「ま、そうだな」


「なんか拍子抜けっつーか」


「まあまあ、ご飯食べよご飯」








よく見ると可愛らしい顔をしているシガイの横をスタスタと通り過ぎていく。


可哀想な気もするけど、仕方ない。襲ってこない敵を討伐するのも躊躇われるから。





「〜〜〜――!!」





「あ?おいプロンプト、何か言ったか」


「え?言ってないけど」


「なんか声が聞こえたんだが……」








グラディオさんのその言葉に、気になって後ろを振り向いた。








「……あらっ」












シガイくんが、元気に私たちの後ろに着いてきていた。










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