短編
□クリスマスSS
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「アクア」
「あ、イグニス。お帰り」
レスタルムの街もクリスマスを祝う風習があるらしい。アサシンズフェスティバルのときのような華やかさだ。
ホテルのバルコニーから遠くのお祭り騒ぎを眺めていると、イグニスが帰ってきた。
「ノクトたちが呼んでいる。全員で街を見て回ろうとな」
「はーい。準備しないとだね」
「いや、まだ焦らなくていい。あいつらも支度するらしいからな」
「?うん」
イグニスはそう言って私の隣に来た。並んで一緒に街を眺める。
もうすぐ夜へとなる時間――マジックアワーだ。
「あの話を、覚えているか?」
「え……?」
突然、イグニスが言った。
聞き返したけれど、あの話っていうのは――。
「……クリスマスを、一緒に過ごすことだよね?」
「ああ。場所が違うにせよ、今年も共に過ごせてよかった」
「……うん。でも――」
去年とは勝手が違う、旅の途中だけれど――。
「私が隣にいることは、変わらないよ」
イグニスの目を見て、そう言った。
彼は少し目を見開きつつも、私の手を取って微笑んだ。
「……なんだか、照れるな」
「ふふ、……そろそろ行く?」
「ああ、そうだな。……手を」
イグニスは私に右手を伸べた。自然に、当たり前のように。
それに私も、当たり前に自分の手を重ねる。
クリスマス。
特にやることはなかったけれど、たまにはこんなのもいいかな、と。
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