短編

□クリスマスSS
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「……へあっくしょんっ」








寒空の下、どうにも鼻がむずむずします。




私の体調とは裏腹に、どうにもこうにも街は電飾や飾りやツリーで綺麗だけれど。






「大丈夫か?」


「ううん、多分大丈……っくしゅ!」





イグニスの質問に答えを言い切れず、またくしゃみで返してしまう。





今日はクリスマス。


毎年一緒に過ごしているからか特別なことをしようとはならなくて、イグニスの家に向けて歩いています。






「っあー、ちょっと冷えちゃったのかな……」


「かもしれない。……早く帰ろう。このままでは風邪を引いてしまう」


「ん。……ごめんね、イグニス」


「悪いと思うなら、マフラーもちゃんと巻け」


「はあい、お母さん」


「母になった覚えは無いのだが」






私のマフラーを巻き直し、イグニスは手を取った。



手袋越しではあるけれど、さっきよりもだいぶ温かい。





「あったかいー……」


「それならよかった。……行くぞ」


「はいー」


























































「お邪魔しますー」


「ああ。……くしゃみはマシか?」


「うん。ありがとー」




ブーツを脱ぎ、部屋に上がらせてもらう。



私の前を歩くイグニスは、手早く暖房を点けた。




「部屋が温まるまでコートは着たままの方がいいかもしれないな。手袋も」


「わかった」





着の身着のまま。ソファに座るイグニスに続いて私も隣に。





「……ああ、そうだ。マフラーは外してくれ」


「?うん」




イグニスの言う通りに、私は2重に巻かれたマフラーを外して畳んだ。


すると。





「……!?」



「……」







両頬を掴まれ、唇に唇を押し当てられました。







「い、い、イグニス……!?」


「クリスマスだからな。調子に乗ったと思ってくれ」


「……それ冬になってから似たようなの何回も聞いたよ」


「言い訳にしては上々だからな」


「ううー……」






『寒さにやられた』『冬だと思って』、エトセトラエトセトラ。




冬になるとイグニスは途端にキス魔だ。




……いや春でも夏でも秋でもそうなんだけれども。





「いやか?」


「いや、じゃ、ないです」


「ならば、もう一度――」


「だ、だめ……!」


「なぜだ」


「や、なんか、その、変になる……色々」


「変……?」









寒いから皮膚自体は冷たいはずなのに、なんだかイグニスにキスをされると体の中心が熱くなる。


普通に熱くなるだけならばいいんだけど、違くて……。










と、その旨を話した。







「ほう」


「だから……って、んんっ……!?」






イグニスは私の静止を聞かずに同じことをした。



顔が熱くて熱くてたまらない。

















数分。






「……アクア」


「な、に……?」






――ある程度めちゃくちゃにされた後、ボーッとする私をイグニスは呼んだ。




ぐったりしてしまった私の頬を撫でながら、イグニスは言葉を続ける。





「来年も、一緒に居てくれ」


「……へ?」


「クリスマス。毎度特別なことはしていないが、何があっても共にいたい」




少し寂しげな目をしてイグニスは言った。






私はなんだかむず痒くて、でも嬉しくて――。







「もちろんだよ、イグニス」







そう、言った。










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