いつか、私は。

□Chapter 13-1
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まだ少し頭の中がずきずきと痛む。



さっきのはいったい何だったんだろう、とか、どうして気が付いたら皆倒れてたんだろう、とか疑問は尽きない。




起きたら車内の異変とかがなくなっていて、代わりに疲れ果てたようなノクトくんがいたんだけれど……。





「アクア?」


「……んー」


「アクア」


「えっ、あ、はい、なあに、イグニス?」





むい、と頬を突かれる。


驚いて指の主であるイグニスの方を向くと、少し困ったような表情を向けられた。



……余談だけれど、イグニスは最近音などの情報から私の顔の位置を特定するのが上手くなっている気がする。








「考え事か」


「うーん、ちょっとね……少しだけ緊張するというか」






敵の本懐に近づくともなると、頭も固くなってしまう。


……ダメだね。こういうときこそ冷静にならなきゃなのに。







「もうすぐ、だね」


「そうだな……そろそろ帝都に着くころか」


「ああ」


「帝国の核……だよね?」


「どんな街なんだろうな」


「シガイだらけつってたっけ」


「……ふん、気が重いぜ」


「中へ入ったら、要塞を目指すぞ」


「要塞?」


「ジグナタスと呼ばれる、巨大な軍事施設があるんだ」


「ジグナタス要塞……」


「……クリスタルもプロンプトもそこか」


「攻め甲斐があんじゃねえか」






グラディオさんは一人、バーカウンターに腰掛けながら言った。




「しかし、クリスタルにシガイを駆除する力があるってのには驚きだ」


「そう考えている者もいるだけで、確定したとは言えないが……」


「……」


「シガイの勢いが、夜が長くなったことと関係があるとしたら――クリスタルの奪還は、ルシスというより世界にとって重要なことなのかもしれないな」


「世界……」


「まあ、とりあえず返してもらってから」


「っ……」





世界。







話の規模が大きくなっていくごとに、私は少しだけ頭を殴られたような錯覚をしてしまう。










“大切な人たちの仇を取るため”

“皆の役に立つため”

“イグニスの傍にいるため”










世界という大きな尺度で見た私のこの考えは、どうにも小さく見えてしまう。



もちろん、この思いに曇りなんてない。でも、世界を救うという大きすぎる事件を、私なんかが背負う一員にいていいのかな、と。












私は――。












「アクア」



「!」






不意に名前を呼ばれる。








顔を上げると、ノクトくんがこっちを見ていた。







「な、なに?」


「何考えてんのかわかんねーけど、そんな深刻な顔しなくていいと思うぞ」


「え……?」





ノクトくんは少し呆れたような目をしながら言い放った。







「お前はただのお供の一人だからな。俺のサポートとかイグニスのサポートしてくれるだけでいいんだって」




「おう、そうだ。まずは目先の目的、だな」




「ノクトくん、グラディオさん……」




「……アクア。俺の頭の固さが移ってしまったのかもしれないが、心配しなくていい。お前は十分に強い。今はそれだけでいいんだ」



「イグニス……」








皆の励ましに、少しだけ胸の内が軽くなった気がする。



少々照れくさくなりながら、私は頷いた。







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