いつか、私は。
□Chapter 12-1
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「ん?電話か」
「プロンプトか?」
「いや――ノクトだ」
しばらくして、イグニスの端末に電話がかかってきた。
かなり長い間音沙汰がなくて不安だったけれど……よかった。無事なようだ。
「どうした」
イグニスが応答する。長い間黙って聞いていたけれど、一瞬イグニスの表情がぴくりと変わった。
「……ノクト、落ち着け。状況は分かった。だが列車を止めるのは危険だ。また襲われかねない。他の乗客もいる」
「っ……?」
話している口調からして、少し異常事態のようだ。
グラディオさんと私は、そのままの状態でイグニスの通話が終わるのを待つ。
「もうすぐテネブラエに着く。そこで他の乗客を降ろそう」
……そうか、テネブラエ、もうすぐなんだ。
少し悠長に考えていると、またイグニスがノクトくんに話を続けていた。
「……帝国の宰相が絡んでいるなら、ヤツに連れていかれた可能性もある。そうでなくても、連絡があるかもしれない。少し待ってみないか」
……連れていかれた?
あれ、ということは、プロンプトくんは――?
「こっちに来られるか?アクアとグラディオもいる。…………ああ」
そう言ってしばらくすると、イグニスは端末を自分の耳から離した。
列車がトンネルに入る。周りが暗くなり、列車内の照明が目立つようになった。
「連れていかれたって……どうしたの?」
「プロンプトがいなくなったらしい。そこに宰相も絡んでいると言っていたが――」
「そんな……」
「……ノクトは?」
「“また来た。片付けてから行く”と言って通話を切った。……おそらくシガイだろう」
「ここにもいんのか……まあ、トンネルだからか?」
「乗客の皆さんに被害が及ばなければいいんだけど……」
「ああ。……とにかく、職員に話を付けよう」
「そうだな」
立ち上がって、また前方車両に向かう。
プロンプトくん――。
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