いつか、私は。
□Chapter 10-2
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カルタナティカ駅の工務用エレベーターで下へ。
少し前に連絡を取ったコルさんの情報によれば、ここの奥地に最古の王の墓所があるらしい。
どうしてこんな場所に――という疑問はおそらく無駄なんだろう。
何と言っても最古の王の時代に建てられたものなのだから、地形やらが変わっていてもおかしくない。
ケスティーノ鉱山。
前まではもっと豊富な資源の山だったらしいけれど、今は廃れてしまって野獣の巣窟みたいになっているんだとか。
「安全に、中入れるかな?」
「この辺りの野獣とは馴染みもない。もし戦うなら気を付けよう」
「……うん、わかった」
……ノクトくんは、あまり私たちに顔を合わせようとしない。多分、ちょっと気まずいのかもしれないけれど。
彼はどんどんと先へ行く。
「やっぱり大きいところだね……地面もボコボコ」
「足場、悪いぞ。転ぶなよ」
「ああ、気を付ける」
「キツかったら、待っててもいいからね」
「躓いちゃったりしたら、遠慮なく私を支えにしてくれていいから」
「……すまないな」
イグニスは杖と私の手を握り直した。
……後々は多分、私の手無しでも歩けるようにはなるのだろうけれど、慣れないうちは――。
「おい、王様。後ろの速さに気を配れよ」
「うるせーな。わかってるよ」
……周りがこの調子だもの。
それに、足場も雨のせいで輪をかけて悪い。大きな水たまりがそこかしこにできあがっている。
「っ、イグニス、野獣。結構数が多い」
「わかった。……役立てないかもしれないが」
「無理はすんなよ」
「…………ああ」
先に斬り込んで行ったノクトくんに続いて、私も攻撃の構えを取る。
なんだか魚類のような――するどい牙や鱗を持っていた。
「ふっ!」
敵の間合いに入りながら、自分の間合いに引きずり込む。多数相手は苦手でも、一体一体確実に。
ゼロ距離で、自身の脚技を叩きつける。
骨を、肉を、断つように――。
「っ、イグニス!」
「!」
一体を沈めると、イグニスの後ろで野獣が水の弾丸を放つ準備をしていた。
咄嗟に彼の元へ走り、身代わりになるようにイグニスの前に出て、放たれた弾丸を足で受ける。
「っ、よし」
バシリ、という強い音が響いた。
……少し痛むけれど、これくらいならば。
「アクア!平気か!」
「大丈夫。それより、イグニスから見て二時の方向と五時の方向に敵、投擲の射程内!」
「っ、わかった」
さて、私は――。
「あんまり前に出んなよ」
「……何か邪魔をしたか」
「いや、そーいうんじゃなく――」
戦闘後、皆一層疲れたような表情で一息ついた。
戦闘であまり気にしていられなかったけれど、大きな機械のようなものが中心にでかでかとそびえ立っている。
鉱山用の機械か何か?随分と古そうだけれど……。
「墓はこの下か」
「イグニス、足元」
「……ああ」
「さっきより転びやすいから、ゆっくりね」
プロンプトくんと私の言葉に、イグニスは申し訳なさそうな顔で頷いた。
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