いつか、私は。
□Chapter 10-1
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あれから、数週間経った。
ノクトくんもだいぶ動けるようになったし、そろそろ出発しようという話に。
首相へ色々な話とお礼をお伝えしたり、復興の手伝いをしたり、もうこのオルティシエにやり残したことはない状態だ。
今後の方針の話も、皆で慎重に話し合って決めた。
……ノクトくんは黙っていたけれど。
今の目標は――帝国にある王の墓所から力を授かるため、そしてクリスタルを本格的に奪い返すために、ニフルハイムの帝都へと向かうこと。
オルティシエから一気に大陸を渡って、ニフルハイムへ。故郷再建への大きな進軍を行う。
でも、そう――あれから、数週間も経っているんだ。
ノクトくんは水神リヴァイアサンから啓示を受けることができた。これは大きな収穫。
でも、失ったものの方が多い。
ルナフレーナ様――。
直接会ったことは無い、もちろん話したこともない。ただ私が一方的に知っているだけの、遠い方。
――それでも、生きていてほしかった。
そして、イグニスの目。
失明ではないから、きっと視力は時間と共に回復する。
皆、そう考えていたけれど――。
イグニスの視力は、数週間経っても何も変化はなかった。
「あ……イグニス、ちょっと段差あるよ、気を付けて」
「ああ」
今日、私たちはこのオルティシエを発つ。
シドさんがいる船へと私はイグニスを誘導していた。
ただ――ノクトくんだけは、あまり乗り気でないように、橋から下の海を眺めていた。
「……」
見かねたグラディオさんがノクトくんの方を向く。少しだけ見えたその目は、睨んでいるようにも見えた。
ノクトくんはそれを感じたのか感じていないのか、少々脱力したように私たちの元へ歩いてくる。
ただ、誰も、何も、話さなかった。
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