いつか、私は。
□Chapter 9-19
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帝国兵が去って行ったのを見計らってか、街にはちらほらとオルティシエ兵が姿を見せていた。
彼らは壊れた街の様を見てただちに復興作業へと入っていく。
崩落した橋、折れた柱、爆撃の跡が無情にも残る家々……。
煙を上げる街は、もはや“水都”という枕詞を持て余しているようだった。
「……長かったな」
「うん……そうだね」
「…………」
祭壇から帰ってきたグラディオたちがつぶやく。
ノクトは変わらず目を閉じ続けており、グラディオの背で、イグニスは気を失っていた。
あれだけの激闘の末なのだから致し方ないが、その姿は見ていて痛々しいものではある。
何よりも――その焼け爛れた目元が。
「……ルシス王一行だな」
グラディオ、プロンプト、アクアが歩いていると、前方から一人のオルティシエ兵が走ってきた。
返事をしたのはグラディオだった。
「ああ、そうだ。全部終わったぜ」
「ふむ。……首相からの言伝を預かっている。ここから先にあるホテルの部屋を好きなだけ使用してもいい、とのことだ」
「おいおい……いいのかよ」
「貴公らの奮戦を俺たちオルティシエ兵は知っている。もちろん首相も。それにどうせ誰も使うまいよ」
「……アクア」
「…………他に行くところはありませんし、お言葉に甘えましょう」
「わかった。ではこちらに」
兵士が先導していく。グラディオはイグニスを背負い直すと、歩きながらアクアを見た。
口数が圧倒的に少ない。表情も、人形のように凍り付いている。
ただ手だけは――イグニスを掴む手だけは、強く力が込められていた。
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