いつか、私は。

□Chapter 9-17
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目を開けると、アーデン・イズニアが俺の短剣を持ってこちらを見下ろしていた。








瞼が重い。蹴られたからか。









いや――それ以上に、いつもより視界が悪い。眼鏡が外れている。






……だが、そんなことは今どうでもいい。







「ねえ、主のこのザマを見てどう思う?」



「――何を」




アーデン・イズニアが俺に話しかける。


気味の悪い笑みを浮かべながら、馬鹿にした口調のまま。




「君も本当はがっかりしてるんでしょう?立派な王になると期待して、命までかけてきたのにね」






アーデン・イズニアは、ノクトの方へと歩いて行く。



手にはまだ――短剣が。





「やめろ……!!」



「俺もなんだ」





――違う。



俺は、ノクトが王になるからという理由だけで、守りたいんじゃない。






「だからもう諦めて。旅も未来も、ここでおしまい」



「っ、何を言っている――!」





アーデンは俺に向けて一つ笑うと、手に持つ短剣をノクトに振り上げた。













「ノクトォォ――!!!」



































カン、と音が響いた。



アーデンとノクトの間を、俺の短剣の片割れが飛んだのである。



投げたのは――別で捕らえられていたレイヴスだった。





「へえ、すっかり仲良くなったねえ?」





アーデンがノクトを投げ捨てる。



地に叩きつけられたノクトの手から、小さな何かが零れ落ちた。





それは俺の元へと転がってくる。






それは――。








「グ、ァ――!!」





アーデンの手から邪悪な煙が迸り、それはレイヴスをまるで弾丸のように弾いた。



祭壇の壁に、レイヴスが叩きつけられる。




「……ひとつ提案なんだけど」




レイヴスへは何も感想を離さぬまま、アーデンはゆらりとこちらを振り返る。


手にはまだ、その煙を纏ったままだ。














「ここで皆で死ぬ?それとも……君が俺と一緒に来る?」












――何を。






「どっちがいい?」





ピエロのような所作で、アーデンは俺に問う。










死ぬ――これは容赦せずに殺しに来るということだろう。




だがもう一つ――一緒に来る、というのが理解できない。


……手を組む代わりに、ノクトたちの無事は保証するという意味か……?






























俺は――。

































“イグニス――”













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