いつか、私は。

□Chapter 9-13
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「うおおおおおおおおっらあああああああああああああ!!!!」







「でりゃあ!!!」





「よっとお!!」








グラディオさん、プロンプトくん、そして私。





イグニスに頼まれた陽動を懸命に果たすけれど、やっぱり消耗も激しい。



もちろん、私も――。








『……――全隊に通達、オルティシエ全域より撤退する。3分以内に渡船場に集合せよ』







耳元の通信機が受信するけれど、その音より大きな金属音であまりよく聞こえない。



意識もそちらへもっていきにくい――。









『ボートを用意してくれ!祭壇へ向かう』







イグニスの声だ。



すこしクリアに聞こえたその言葉は、私の元へと不安を誘う。








『正気か?無茶だ!』


『王を助けるためだ!頼む!』


『彼の言う通りに』


『っ、了解です』


『感謝します……!』


『この貸し、高くつくわよ』









………イグニス。





あそこまで声を荒げているイグニスを、私はあまり知らない。



でも、不思議と彼の焦りや不安は私の身体を刺すように伝わっていた。










ああ、でも、やっぱり――。













「ふっ!!!」










気を入れ直して、帝国兵を蹴り飛ばす。




足が入ったのは胴体と頭のちょうど間、首のど真ん中。勢いそのままに頭はちゃんと捻じ切れた。












「っ、聞こえる!?」





プロンプトくんが通信機に話しかける。



でも、反応がない。



どうしたんだろう、と思ったけれど、グラディオさんが眉間に皺を寄せながら怒鳴った。





「おいイグニス!聞こえてんなら応答しろ!」







『聞こえている!』






イグニスは、完全に焦燥しきっていた。



だからつい大声になっていた。





「らしくねえぞ!気持ちはわかるが、冷静になれ。そんなんじゃ、ノクトは救えねえぞ」





『っ……』








通信が、シンと静まり返った。




こういうときに私が話していいのかわからないけれど、手を通信機に当てる。






「イグニス、大丈夫だよ」



『アクア……』



「ちゃんと、こっちはやり遂げるから。だから、安心して前に進んで」






こんなことしか言えないけれど、せめて“こんなこと”は言っておきたい。




そう思って話した。





『……ありがとう』



「っ、うんっ」



「俺たちも必ず追いつくかんね!」



「……ああ、わかった……!」






通信が切れる。きっとイグニスは今から、ボートで祭壇に向かうんだろう。さっき言っていたように。





「っ……」







ただ、嫌な予感がする。





今も十分に嫌な状況だけれど、それ以上のことが起こりそうな。







「……イグニス」





「おい、アクア、次行くぞ!」




「は、はい!」






……ダメ。




今は変な予感に付き合っている場合じゃない。






イグニスのため、延いてはノクトくんのため。








「今、行きます」







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