いつか、私は。
□Chapter 9-11
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「――すまない、行ってくる」
「!……うん、行ってらっしゃい、イグニス。……どうか、ご無事で」
決して寂しくないわけがなかった。
私に背を向けて離れていくあの姿を見て、泣きそうにすらなった。
全てかなぐり捨てて、私の元にいてほしいという汚い欲も――ないわけではなかった。
「……よし」
でも、私は、イグニスの邪魔をしたくない。
あそこから先は、きっと彼だけの道。そこに私欲で入っていくという無粋なことは万に一つもしてはいけない。
私はただ、離れたここでイグニスの援助をする。彼の元に向かう危険を少しでも減らすために。
それが今の私に許された、唯一できることだから。
「……っ」
ガシャリガシャリと重く鋭い音が、いくつも重なって耳に入る。
細い道から、数体の帝国兵が顔を見せていた。
「……思っていたほど、早くはないんですね?」
彼らは言葉は返さない。そうわかりつつもつい悪態をついてしまう。
帝国兵は目を光らせながらにじり寄ってくる。私はその間に足を構えた。
――この無感情な機械を倒して、まずはグラディオさんとプロンプトくんと合流しよう。
「っ――」
帝国兵の一体が、剣を振り上げる。
私は目視の後横にずれ、振り下ろされる前にその手を一蹴り。
カランカランと飛んで行く剣の金属音をBGMに、そのままその帝国兵の首元目がけて足を打ち込んだ。
胴体と頭がちぎれるが、複雑な回線が体内を構築している。鈍く青い電気が瞬く。
一体に構っていられない。
身体を捻り、もう一体、さらにもう一体に足を打ち込んだ。
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