いつか、私は。
□Chapter 9-2
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水都、オルティシエ。
水都という枕詞にふさわしく、辺りを見渡す限り水路や滝などに水が流れていた。
建物も時代を感じさせる、ルシスとはまるで違う文化を示している。
「そこの船!通行証は!」
いざ門をくぐらん、というところでオルティシエの兵が我々に言う。
そして通行証の確認のため船へと上がった。
「え……通行証?」
「慌てんな、ちゃんとある」
プロンプトが不安そうに言うが、シドは冷静に懐から一枚の紙を取り出した。
「ほれ」
「随分と古いな……。まあいい、行ってよし」
オルティシエ兵は船から降り、入国の許可を出した。
そしてシドはそれを見て平然と船を進める。
「あらかじめ準備を?」
「してねえよ、30年前のだ」
「古いってのはそういうことか」
「まさか通るとはな」
「えっ」
「そんなもんなのかよ」
……通れたのが奇跡のようなものだな。
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