いつか、私は。

□Chapter 9-1
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「海だー。なんかこういう船で旅してみたかったんだよね」



「ねー。私もー」



「インソムニアにいたら、なかなかこういう機会はねえからな」



「どこまで行っても見える地平線!なんかすごいよねー、神秘」



「オルティシエまではたっぷり時間があるからな。好きなだけ感動したらいい」



「やっぱり世界って広いねー」



「アクア、船酔いは大丈夫か?」



「うん、今は平気だよー、ありがとう」



「そうか。もし体調が優れなくなったら言ってくれ」



「はあい」



「出たよ過保護」



「船が着いたら他の国なんだよね」



「ああ、なんだか不思議な気分だな」



「やっと当初の目的地に着くってわけだ」



「苦労したよな」



「だが、着いて終わりじゃない」



「今度は水神なんだっけ?」



「どんな性格の神様なんだろうな」



「神話では気性が荒いとされているが」



「ちょっと不安だね……」



「相手がどーでもやんねーと」



「ルナフレーナ様も頑張ってくれてるんだもんね。再会、楽しみでしょ?」



「ルーナ?」



「うん」



「まあ、無事かどうか確認しねーと」



「ああ。まずはそこからだな」



「ご無事であればいいんだけど……」



「帝国領ってのがちと心配だ」



「心配って、ルナフレーナ様?」



「ルシス襲撃の目的の一つは指輪だ。相手がルナフレーナ様とはいえあの国がどんな手に出るかわからない」



「指輪がなきゃクリスタルもただの石だからな」



「ああ、そっか」



「色々と用心しないとね」



「でもなんで指輪はルナフレーナ様が――」



「状況から考えると、王都で陛下が託されたんだと思う」



「ずっと指輪を守りながらオルティシエに――か」



「水神の方も大事だけどな。まずは会って解放してやんねーと」



「そういえば、帝国軍のレイヴスだが」



「ん?」



「彼の腕が義手だったのを覚えているか?」



「ああ、覚えてるぜ」



「王都襲撃の中で失ったそうだ」



「え、そうなの?」



「ああ。だが同時に何か特異な力を手にしたという」



「力?」



「だとすりゃ相当なもんだな。いきなりテネブラエ人が将軍に抜擢されてんだ」



「力って言ったら正直、人とは思えないほどだった。神凪の一族だからかと思ったけど」



「でも要素の一つとしてはあるかもしれないね」



「なくはねえだろうが、だが確かに尋常じゃなかった」



「あいつにも何かあったってことか」



「そしてこれはあくまで噂だが――ヤツは今、陛下の剣を携えているらしい」



「オヤジの?」



「そいつはどういう意味だ?」



「どうしてレイヴス将軍が……?」



「王様のお墓と同じってこと?」



「わからない。だが、王家の力と関連はなさそうだ。何より――使っている様子はないと」



「ただ、持っているだけってこと……?」



「力を手にした割には宰相に頭が上がらねえし、その陰で敵の形見を大事に持ち歩く?」



「どういうつもりなんだろ」



「さあな」



「水神のところにもやっぱり帝国は来るよね」



「可能性は大いにある。ヤツらが巨神を襲ったのは六神の力がノクトへ渡るのを防ぐためだ」



「あの時は先に着いたんだよね、案内があって」



「あいつ、どう動くんだろうな」



「謎が多すぎる人ですもんね……」



「宰相の目的はわからない」



「レイヴスと会った時も俺たちを見逃してくれたけど」



「なんかムカついたけどな」



「結果として助けられてる気はするが、いうほど善意でもねえって印象だ」



「言われてみれば……」



「また来るのかな」



「会いたくはないな」



「嫌ってるよね」



「不真面目なヤツだからな」



「……違うんだ。グラディオの言う通り彼には善意でという印象がない。手助けされる状況に陥るたび、非難の目を向けられている気がするんだ」



「あー……」



「まあ、言われれば?」



「考えすぎじゃない?」



「かもな。だが油断はできないと思ってる」






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