いつか、私は。

□Chapter 1-2.5
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気が付くと、見知らぬ男性が私に手を伸べていた。




どことなくグラディオさんと同じ雰囲気。私は無意識にその手を取った。



「私、私は……」



「ああ、イグニスの婚約者だな。知っている。安心しろ、王都を出るぞ」




「王都、を……?」







王都を出る? 今まで住んでいた家も全て置いて? お世話になっている人たちを置いて?




イグニスと、暮らすはずの故郷を置いて――?







来た道を振り返る。まさに地獄としか形容できないような、紅蓮の世界。


今もなお続く、耳を裂くような爆発音や悲鳴のBGM。


本当にここが私の暮らしていた国なのかと疑いたくもなる。




それでも――、





「気持ちはわかる。俺にもここを離れるのには勇気がいる」






男性が――コルさん、と名乗る方が、私の肩に手を置いた。


振り返ると、苦い顔でこちらを見ていた。





「だが、まだやらなければならないことがある。お前にもあるはずだ」




「やらなければ、ならないこと」





――私は。






「連れて行ってください」






外の世界に。



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