いつか、私は。
□Chapter 1-2.5
1ページ/4ページ
気が付くと、見知らぬ男性が私に手を伸べていた。
どことなくグラディオさんと同じ雰囲気。私は無意識にその手を取った。
「私、私は……」
「ああ、イグニスの婚約者だな。知っている。安心しろ、王都を出るぞ」
「王都、を……?」
王都を出る? 今まで住んでいた家も全て置いて? お世話になっている人たちを置いて?
イグニスと、暮らすはずの故郷を置いて――?
来た道を振り返る。まさに地獄としか形容できないような、紅蓮の世界。
今もなお続く、耳を裂くような爆発音や悲鳴のBGM。
本当にここが私の暮らしていた国なのかと疑いたくもなる。
それでも――、
「気持ちはわかる。俺にもここを離れるのには勇気がいる」
男性が――コルさん、と名乗る方が、私の肩に手を置いた。
振り返ると、苦い顔でこちらを見ていた。
「だが、まだやらなければならないことがある。お前にもあるはずだ」
「やらなければ、ならないこと」
――私は。
「連れて行ってください」
外の世界に。
.