いつか、私は。
□Chapter 1-1
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「戸締りはしっかりするように」
「はい」
「仕事からはなるべく早めに帰ること」
「はーい」
「もし遅くなるようなら同僚や店長に送ってもらうように」
「はいはいー」
「それから、」
「イグニスー、そこまで言わなくても大丈夫だよー」
やっぱり優しい。心配してくれてるんだなあ。
私が着替えた後、軽く朝食を食べていると、ついにイグニスがノクト王子たちの元へ行く時間になった。
お見送りしようと玄関にいるけど、ずっとこんな調子です。
「また連絡する」
「うん、私も!」
「ふ……では、行ってくる」
「気を付けてね」
バタン、と扉が閉まった。途端に切なさやら寂しさやらが一気に押し寄せてくる。
でも、別れを惜しむのは昨日の夜散々した。一生の別れでもないし、泣いちゃダメ。
「……負けない!」
軽く自分の頬をはたく。あ、ちょっと痛い。
昼前には仕事がある。準備しなくちゃね。
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