短編
□ホワイトデーSS
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3月14日。
「……」
ついにこの日が来てしまった、と奏はカレンダーを見ながらごくりとつばを飲み込む。
バレンタインデーに真島組の全員へチョコを配り歩いた。もちろん組長の真島吾朗にも。
世間一般の形式的には、今日がその“お返しの日”というわけである。
ただ、奏は少し不安があった。
その前のクリスマスのことである。
組を上げての一大イベントになってしまったあの日の二の舞になるのではないか、と奏は思っているのだ。
いや、まだお返しがもらえると決まったわけではない。そう考えてはいるが、さすがにそこまで鈍感な彼女ではない。
なにしろ彼らは極道。返礼というものはどんなものでもしっかりと果たすという心情を持っている。
特にこの古き良き極道文化を守り抜いている真島組は。
「……考えすぎ」
奏はそう言って荷物を持って部屋を出た。
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