短編

□バレンタインSS
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「なんでー……奏ちゃんなんでー……」






真島は部屋の机に突っ伏していた。




脇には本部から渡された仕事の山がたんまりと。





「お、親父?」



「なあ……」



「へ、へい」





部屋にいた幹部が声をかけると、真島は突然彼に向けて声を上げた。




「うちの子、反抗期かいなあ……」



「うちの子……姐さんに何か?」



「部屋に入れてくれへん……昨日まではびっくりするくらいすんなり入れたんに……」




それはそれで問題では、という考えを持ちつつも、幹部は慌てて返答する。





「ま、まあ、姐さんも年頃ですし、親父に見られたくないもんの一つや二つ……」






「…………例えば」






「ええ!?た、例えば!?」




「言うてみいや……例えば、なんやねん」








「…………あ」






「お前今なんか思いついたやろ」



「えええ!?い、いいいいいいいえ何も思いついてないっす!」



「嘘つけえ!正直に吐けやあ!」



「ヒィイイイイイ!!!」






「失礼します……何やってるんですか」







「あ、姐さん!」


「奏ちゃん!」



真島と幹部がやいのやいのと口論(真島一本道だが)していると、部屋のドアが開いて噂の奏が入ってきた。



二人の様子に少し首を傾げながらも、奏は真島に向けて話す。





「少し買い物に行ってきます。すぐ戻りますので……」



「買い物て……もう夜の八時やで?明日やアカンのん?」



「…………できたら今」




「ほお……よっしゃ、ほな俺も行こか」




幹部の胸ぐらを掴んでいた手を離し、笑顔で奏へと近づいて行く。





「えっ!?」




だが、奏から帰ってきた言葉はそれはそれは強い驚愕だった。



「ん?」



「……大丈夫ですよ、すぐ近くのスーパーですし」



「アカン、最近は物騒やから」



「吾朗さんがそれ言います?」




「それもせやねんけど。行くんやったら俺も着いて行くで。せやないとアカン」




「えーと………………………はい」



「?じゃ、行こか」






奏の煮え切らない答えにまた疑問を抱きつつも、真島は奏を連れて神室町へと繰り出した。






「あ、行ってらっしゃいやし!……言えるわけねえよなあ、姐さんに恋人がいたりしてーなんて……」









































さて、その道中である。




「(ど、どないしよ、あの部屋の前のこと聞くんやったら今がええんやろうけど……)」







〜真島の脳内〜



『せや、奏ちゃん』


『はい、吾朗さん』


『貼り紙が部屋の前にあったけど、部屋で何しとんの?』



『なっ、何でそんなこと聞くの!部屋の中について知りたいとか吾朗さんの変態!もう口利かないから!!』



口利かないから……


利かないから……


ないから……



から……






















「聞けへん!」


「びっくりした。どうしたんです?」


「あ?あー、いや、な、なんでもあらへんよ??」


「はあ、そうですか」



「ほ、ほら、スーパーついたで!買うてき?」




真島のその言葉に大きく首を傾げつつも、奏は頷いて買い物かごを持った。




もうすぐ閉店だというのに、店内にはまだ人がパラパラと残っている。








「……えっと」



「……」



「……まあ、いいか」


「?」





意味深に真島をちらりと見て、奏は自身の頭くらいはあろうかというくらいの袋を両手で抱えた。



「よいしょ」




「随分でっかい袋やなあ」



「ええ、まあ。でも今必要なので」




「ほお……?」









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