狂犬の娘

□十九章「娘と、離別」
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「――思ってたような女子でしたな」



「っ――」





震える手で銃を向け続ける奏に少し鋭い目線を送り、二階堂はバッティングセンターの出口へ振り返った。




突然の行動に奏の目には動揺が映るが、二階堂は構わず出口へと歩き続ける。




それについて行く形で、他の極道たちも、いつもそばに控えているあの派手な男も歩き出した。










「そないなか細い手で、どこまで足掻くか見物やな」













それだけ言って二階堂は去って行った。




ふう、と銃を下ろして一息吐く。




さっきの自分の言葉が正しいのかどうかはわからない。合っていても間違っていても何も言わなかったのだろうが。




指が震えてくる。正気の人間に銃など向けたことがないからだということも、奏はわかっている。




中途半端にわかっているがゆえに――己の不甲斐無さに腹を立てそうになっていた。







「……あ」









バッティングエリアの方から先ほどよりもかなり大きな爆音が聞こえてきた。



二人はどうなのだろう。生きてはいるだろうが、無事なのだろうか。



そう思っていざ、と二人の元に戻ろうとしたときである。






ドン、といううるさい音が響いた。







「GU、OOOOOOOOOOOOOOOOOOOO……」





「っ!?」




先ほど二階堂らが出ていったドアが蹴り破られ、大量のゾンビが入ってきたのである。






まずい、と奏はゾンビに見られるよりも早く、咄嗟に受付の方へ隠れた。




その俊敏さが功を奏したのだろう。ゾンビは奏の匂いやらに気付いてはいるものの、それより視界に映る秋山と真島に意識がいったようだ。




それはそれで問題があるような、と奏は飛び出しそうになるが、今までよりも数が多い。




今奏一人行ったところで、袋小路に会うだけだろう。




それなら――と息をひそめてゾンビの行進が途切れるのを待つ。


























しばらくすると、足音が途切れた。二人の方からは銃声が聞こえる。



そろそろ行かねば、と立ち上がりかけた瞬間である。







「そこにおるん、誰や」




「っ……」






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