狂犬の娘
□十八章「娘と、決戦2」
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「それにしても、嫌な注意事項ですね」
「金貸しが言うとったあれか」
ここから先は片道切符。
色々な場面で後には退けない攻防を繰り返しつつも、こうも面と向かって言われるとどうしても引っかかる。
真島と奏は、賽の河原にあったマンホールに入り下水道を通っていた。
水の音はなかなかにうるさいが、それでも場所が場所なだけに二人の会話は大きく反響する。
「賽の河原も無事では済まないのでしょうか」
「まあ、入り口にあんだけゾンビおったらなあ」
「……神室町ヒルズの方も?」
「んあー……そりゃ、何とも言えん」
「ですね、すいません」
「でもまあ、しばらく大丈夫やろ。っちゅーより、今から元凶にちょっかいかけに行くんやしなあ」
ヒヒヒ、と真島は不気味に笑う。それすらも下水道では反響して、なんとも変なBGMを彩っていた。
奏は、真島の様子にふうと一息吐く。
「せや、奏ちゃん。その銃の使い心地はどないや?」
「え、ああ、これですか。なかなか思い通りになりますよ」
「ほおーん……」
銃に慣れさせてはいけない、と息を巻いていた手前、何とも言えない表情を見せる真島。
その様子に、奏は少しだけ真島に寄った。
「言っておきますが、日常生活でも使いたいだとか、そういうことは一切考えていませんから」
「そ、そりゃあ、わかっとるんやけどな!?」
「あくまで生き残るためです。吾朗さんも言っていたように」
「っ……」
「だから、心配しないでください。この騒ぎが終わればあの――上山さん?に返しに行きますから」
ね?と奏は真島に淡々と言った。
そんな話をしていると、前方には真島にとって既視感のある鉄はしご。出口である。
「ほな後から続くんやでー」
「はい」
バッティングセンターは、もうすぐ。
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