狂犬の娘

□十七章「娘と、決戦」
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花屋のモニタールームからエレベーターで元のどでかい水槽のある場所に戻ってきた。











大理石の床を歩くどうにも不機嫌な真島の表情に、並んで歩く奏はどことなく不安になる。







合わせて、別れ際の大吾の言葉。










『真島さんのこと、頼む』











「……頼まれてもなあ」











――いくら六代目といえど、頼まれてもできないものがある。


いや、反抗だとかそういうものじゃなく、現実的に真島を止めるのは無理だ。ことこういうことに関しては。






はあ、とため息をつく。










それに真島本人もだ。



先ほども言ったが、出てからやけに不機嫌である。原因はわかりきっていることではあれど、奏でも少し心配になるほどに。





大吾の言葉は納得できる。だが、だからといって受け入れるという事ができない。





真島も、そして奏もそんな真島の心情をなんとなく察しているからこそ、現在こんなに静かなのだ。





表に出ようというのも、ゾンビを狩って気を紛らわせるか自分の気持ちにケリをつけるためだ。










……何はともあれここを出るか、と扉に接近しかけたそのときである。


































「真島さん、奏ちゃん」


































ふと、背後から声をかけられた。



真島と奏はゆっくりと振り返る。そこには――。







「金貸しか」





ワインレッドのジャケット、無精ひげ、そしてなんだか胡散臭そうな笑い。





「あー、確かスカイファイナンスのなんたらいう……」





「秋山ですよ。真島さん、お二人でどちらへ……?」







スカイファイナンス社長、秋山駿。






奏も面識のある彼が、そこにいた。











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