狂犬の娘
□十六章「娘と、近江連合の男4」
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息も落ち着いたところで、大吾がホームレスに話しかける。
「助かったよ。……しかし、あんた、何者だ?」
「私は……賽の河原のもんです」
「賽の河原?そりゃ確か……」
「真島さんは、よくご存じのはずで」
「ああ。……のぞき魔の秘密基地やな」
「花屋は……うちのボスはのぞき魔じゃありません。情報屋ですよ、神室町一の」
「フン、よう言うわ」
「そうか、賽の河原は、まだ生きていたんだな」
「さいのかわら……花屋……?」
奏がクエスチョンマークから抜け出せていない。彼女のそんな様子に真島少し口角を上げる。
「行ってみりゃわかるで。ちょっと俺は嫌やけど」
「?」
「……花屋がお三方を呼んでいます。ついてきてもらえますかね?」
「わかった。案内してくれ」
「フン、まあ、しゃあないの」
「よろしくお願いします」
地下にもゾンビが溢れかえっているものの、これまでの修羅場に比べればというものである。
銃をぶっ放しながら、道を進む。
地面に線路があるところを見ると、どうやら元々地下鉄があったようである。
「ヒルズの地下に、こんな……」
「奏に話してなかったんですか?」
「あー……ほれ、花屋のとこはええとしても、そこまでが教育上よろしくないやん」
「教育上」
「教育上」
「でもこんなときやしさすがにあんな感じではないやろ……」
真島の願いは、ものの数分で砕け散ることになるのは、また次の話。
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