狂犬の娘
□十一章「娘と、正義の味方3」
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「っ、吾朗さん、あれが裏口ですね」
「よっしゃ、突っ込むでえ!」
入り口からグルリと回って裏口。
周辺のゾンビも倒し、なんとか構成員の言うようヒルズの中に入ることができた。
一階のエントランスは暗く、やけに寂しい。
「……生き残った連中、どこにおるんや?」
「確かヒルズの二階がスーパーです。食料もあるので、そこじゃないでしょうか」
「ほなそこ行ってみよか」
今度は真島の隣を歩いて、ヒルズの奥に入っていく。
一階にもすでに人が何人かいるが、皆顔が沈んでいた。当たり前ではあるけれども。
止まっているエスカレーターを徒歩で登り、目的のスーパーへ向かう。
まさかここがこうして重要拠点になろうとは、真島も奏もさすがに思わなかった。
「ま、真島のオヤジ!!ご、ご無事でしたか!!」
スーパーの正面、大型通路に一人のヤクザがいた。真島に頭を下げると、背後を手で示す。
「六代目がお待ちです。さあ、こちらにどうぞ……」
「……六代目」
奏は現東城会会長の顔を知らない。
資料で名前は見たが、もはや縁はないと思い気にもしていなかった。
まさかここでお目通りが叶うとは、と若干複雑な心境である。
もちろん、同時に不安も。
上司の上司。というか会社で言う代表取締役社長だ。
前に聞いた真島や冴島の話では「まだ若い未熟者」という感想を聞いているが、それでも――。
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