狂犬の娘

□八章「娘と、狩る者4」
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真島と奏。二人がミレニアムタワーから脱出したころ、未だに太陽は眩しいくらいのオレンジ色に染まっていた。








体感ではかなり時間が経っていると錯覚しそうだが、組長私室にゾンビが現れてまだ1,2時間程度しか経過していないのが現状である。







とはいえまだ夕方か、という会話は二人になかった。いや、する気持ちにならなかった。









外は、ミレニアムタワーよりも混沌としていたからである。










地面には瓦礫が積み重なったり車がいくつか壊れていたり、そして少々煙臭い。




極めつけには、ゾンビではない人々の叫び声が方々から聞こえてくる。





すると、ミレニアムタワーの前を5,6人の男女が走って行った。




そのうちの一人である若い男が、立ち止まっている真島と奏の方を向いて声をかける。






「おい、あんたら逃げろ!とんでもねえ化け物が来るぞ!」






そういうと、その若者はまた逃げていった。真島のこめかみがピクリと動く。







「化け物?」


「化け物らしいですね」


「なんや、ゾンビとちゃうのがおるんかい」


「さあ……。ともかく、西の方に逃げていきました。どうしましょう」


「せやなあ。とりあえずわしらもそっち行こか」


「はい」









階段を降り、とりあえず思った方へ、と足を運んでいく。










するとどうだ、“助けてくれえ!”だの“なんだよアイツ!”という人々の声が聞こえてきた。








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