狂犬の娘

□六章「娘と、狩る者2」
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真島組組長私室。




室内には鼓膜を突き破りそうなほどに、銃声が鳴り響いていた。







「っ――!!」





奏は、真島の隣で援護射撃をしていた。




使用するのは回転式拳銃、通称リボルバー。



回転式の弾倉を持ち、不発だった場合でも対処が可能である。



だが、しかし――装弾数が少ない。拳銃界の古参であるがゆえか。







“余っている銃をくれ(意訳)”とは言ったものの、さすがに隙が多い。








まあ、贅沢は言ってられないが。








「なんや、もう終わりかいな。物足りんなあ」




最後の一人を撃ち抜き、納得がいかない顔で真島は言う。



奏は一つ息を吐いた。




「奏ちゃん、大丈夫か?」


「……やっぱり、銃って慣れませんね」


「まあせやな。戦えそうか?無理なら……」


「大丈夫です、これで。きっと他の種類を頂いても同じようにはなっていたでしょうし」








力にはなれずとも、せめて自衛ができるようにしなくては。今はただ真島に着いて行きたい。




奏はいそいそと弾を込めながら言う。



「とりあえず私は吾朗さんにちゃんと引っ付いて行きますので」


「そりゃほんまか!」





真島は突然の奏の告白に心底嬉しそうな顔を浮かべた。




だって離れたら避難できないし、と奏は心の中で付け加えるが、真島は自分の思うように解釈している。









“どこへでも着いて行きます”といった塩梅に。







「ヒヒッ、ヒヒヒヒヒヒヒッ」




嬉しさのあまり不気味に笑う真島を奏は冷ややかな目で見る。



それよりもここから脱出だ。弾数も心許ないし。




でも真島のことだから、どうせすぐにここから安全な場所へ行こうなどということは言わない。



まだまだ短い付き合いではあるものの、奏はなんとなく察していた。









「さて、どうしましょう」




「お、せやな。外に行って、もっとおらんか探してみるか」









予想通りだ。







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