狂犬の娘

□三章「娘と虎」
1ページ/5ページ








真島には組を越えた兄弟分がいる。












名は、冴島大河。










長い髪に隠れたいかつい顔と屈強な体は、まさに野生の虎や熊を彷彿させる。





彼は少し前まで数十年にわたる拘置所暮らしを送り、真島との深い溝ができていたのものの和解。







現在は冴島組組長として東城会を支える幹部の内の一人として日々奮闘している。






長いムショ暮らしのおかげで最初の方は浦島太郎状態であったが、最近では少しずつ慣れ始めているようだ。









さて、そんな冴島は業務の傍ら、真島組に顔を出していた。





というのも、冴島は来週から中国へ商談に赴く予定である。少しの息抜き程度に兄弟と会うのもいいだろう、というスタンスだった。







ただ――。











「……」




「……」







真島の部屋に兄弟その人はおらず、代わりに見知らぬ少女が掃除機を持ってこちらを見ていた。









.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ