狂犬の娘

□一章「娘と極道」
1ページ/6ページ








日本一の歓楽街、東京・神室町。












「眠らない街」という枕詞にふさわしく、この街は夜でも昼のような明るさを保っている。






スナックや風俗店の客引きに、キャバクラやホストのスカウト。眩しいネオンの下、皆が皆夜の活動を始めていた。










そんな神室町を主なシマとして活動しているのが、東城会である。











構成員は3万人を超え、関東の極道組織を牛耳る存在。





その上、六代目会長堂島大吾を筆頭に、腕利きの幹部が勢揃いだ。









その幹部の中でも一際異彩を放ち、とび抜けた強さを持つ者がいる。








「♪〜」






バット片手に鼻歌を歌いながら街を闊歩するこの男。














彼こそが嶋野の狂犬、隻眼の魔王こと真島吾朗である。










好戦的で享楽的。何をしでかすか全くわからない予測不能の男。














常に自分の欲の赴くまま、夜の街を歩いていた。






「…………お、そや」






はた、と真島は足を止める。




そういえば本部に呼ばれていたのだったか。




なんでも神室町ヒルズのオープンセレモニーについてどうのこうの。







正直めんどいなあ、と思いつつも自分がかかわっている商事だ。







真島は一つため息をついて、タクシーを呼び止めた。








.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ