狂犬の娘
□六章「娘と、狩る者2」
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弾もしっかり補給し、倉庫から出てくる。
「さぁて……56階まで降りればエレベーターが動いとるかもしれんな」
「では今58階なので、2つ下の階まで行ってみましょう」
廊下を走り、階段を駆け下りる。ゾンビを前にした真島は、まるで子供のようだった。
例えるなら、“夏休みにカブトムシを捕まえるのに熱中する小学生男子”のような。
そしてその真島の興奮は、走る速さに表れていた。
「ここも、行き止まり、みたいですね……ケホッ」
「す、すまん!つい早く走りすぎたわ!」
「いえ、大丈夫です、私のことは気にせず……行きましょう。ちゃんと着いて行きます」
「そうか?しんどかったら遠慮せずちゃーんと言うんやで!休憩するし、なんならおんぶとか――」
「全力で着いて行くので、おんぶは勘弁してください」
息は上がりつつもいつもの調子の奏に、真島はにっこりと笑みを浮かべる。
それから道中のゾンビを次々と倒していく。
最初の方は手に馴染まなかったリボルバー銃も、苦戦しない程度には扱えるようになった。
本来ならば奏が慣れるべきでないものとはいえど、状況が状況だ。今は仕方ない。
真島はゾンビに攻撃を撃ち込みながら、どんどん銃に慣れていく奏を少し寂しげな眼で見ていた。
57階、56階と続き、一つだけ機械音を出すエレベーターの前に立つ。
「このエレベーター、使えそうですね」
「ほな、ポチっとな」
エレベーターは予想通り、ボタンを光らせて真島の操作に応える。これで下に降りられそうだ。
しかし押した瞬間、どこからか呻き声が聞こえる。
案の定、ゾンビ。女性型“ナキオンナ”である。
ナキオンナは真島と奏を視界に収めると、甲高く大きな叫び声を上げた。
「っ……耳が……!」
「ひゃは!来よったな!エレベーターの待ち時間暇やし、楽しませてもらおか!」
ナキオンナの声により、色々な場所からゾンビが寄ってくる。
奏は次から次へと襲い掛かってくるゾンビを見据え、必死で冷静を保ちながら向かってくるゾンビに銃を向けた。
真島は増えていくゾンビにまたも不気味な笑みを浮かべながら、躊躇わずアサルトショットガンの引き金を引き続けている。
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