狂犬の娘
□五章「娘と、狩る者」
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真島はゾンビが散るさまを見て狂気的に笑っていた。
「あ、奏ちゃん、怪我無いか?」
「はい、ありがとうございます。……さすがですね、吾朗さん」
「な、なんや奏ちゃん。褒めてもさらに好きになってまうだけやで!」
「でも、私もお役に立ってみせます」
「スルーかいな!」
ちょっとした茶番を繰り広げているが、まだゾンビは残っている。
奏は銃に弾を込めた。
すると、また違う扉から舎弟が現れた。かなり慌てている。
「親父!姐さん!早く下へ脱出を――う、うわああああああ!!!!」
舎弟は、後ろから着いて来たゾンビ3体に襲われている。
ぐるぐるという呻き声を発しながら、ゾンビたちは彼に群がって行った。
「う、そ……」
つい立ち上がった奏から、口を突いて出た言葉。だが、もう今更であることはわかっていた。
これは、日常なんかじゃない。
奏は前を向いて、手に持っているリボルバー銃を教わった通りに構える。
若干手は震えるが、それでも――。
「いくでえ〜」
その隣で、真島も立ち上がった。
ジャコ、とショットガンを鳴らして、まだ笑顔を見せる。
そして、叫んだ。
「がっかりさせんなや!!」
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