狂犬の娘
□四章「娘と、壊れる街」
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「……花さん!」
しばらく走った後、花は立ち止まった。
先ほどの場所からはそう遠くはないが、あの男が追ってくる様子はないようだ。
乱れる息を整えながら、震える声で花は言う。
「わ、私、秋山さんを待ちます!」
「っ……大丈夫ですか」
「大丈夫です!社長は……あんなバケモノに負けません!絶対!」
花は真剣な表情で言った。奏は、その様子に小さく頷く。
……秋山さんは、良い秘書さんに恵まれてるなあ。
「わかりました。……あ。秋山さんに会ったら『奏は真島のところにいます』と、言っておいてください」
「はい!……え、真島?」
では、と奏はミレニアムタワーに向けて駆け出した。
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