銀盤にて逢いましょう


□お久し振りですvv
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相変わらずのコロナ禍も、ワクチン接種が進む中 そろそろ落ち着いて…くれたらいいなという、
どこか微妙なムードの中、
そろそろフィギュアスケートの世界でも様々な大会が目白押しとなるシーズンで。
スポーツなのでシーズンオフでも毎日のように基礎トレは欠かさないが、
それでも本番となる大会が各種居並ぶ季節かと思うと、何とも言えないワクワクが迫ってくる。
コロナ蔓延の関係で、昨年同様、開催中止や無観客となる大会もザラで、
学生さんが主に出場する各地の選手権大会は今年も無観客が多いらしく。
海外で催される大会の場合、国によっては入国出国に観察機関が半月もあったりすると諦めざるを得なくなるが、
それも昨年よりは緩和されている地域もなくはなく。
GPなどに参加するか否かを決するためにも、
協会本部の方々はその辺りの情報収集やスケジュール調整に例年以上に忙殺されておいでな状況であるとも聞く。

「でも、派遣中止が既に2つだったかあったしねぇ。」
「選手のポテンシャルってのか、気力体力のピークを考えたら、
 こういうことでやきもきさせられるのが一番癪だよな。」

何も十代じゃないと持続が難しいとは言わない。
さすがに回復力や無尽蔵だった体力という点はベテランになるにつれ多少敵わなくなるが、
それを補うのが経験値。
何年もかけて積み重ねた経験値による練度は高度な技術力を生むし、
体幹を鍛え、バランスの妙を身に宿しての演技は、キャリアの浅い顔ぶれを蹴散らすだけの武器となる。
とはいえ、将来性を考えたら…と、
大人たちの思惑はどうしたって若くて勢いのある新星発掘に動きがちなのも否めない。
それに、その点に関しては、

「キャリアの話を持ち出すなら、
 こっちも学齢前からすべってる相手よりは短いんだけどもね。」

虎の姫、もとえスズラン娘の敦ちゃんは、
裕福で人脈も豊かな親族の皆様に支えられ、小学生時分からいろいろと嗜んではいたが、
テニスにラクロスにアーチェリーに乗馬にスキーと別な畑のスポーツばかり。
高校進学を期に…というか、
ある日テレビで映し出されていた漆黒の貴公子様の氷上での演技を見て、
この人に会いたいと唐突に、だが、深刻そうなお顔で言い出したことでスタッフ一同よっしゃあと盛り上がり、
まるきり畑違いだったスケート界へ乗り出したというから。
転向組です、まだ数年という短いキャリアです、押し出しが派手でごめんなさい。
芥川に至っては、運動自体 中学生になってから、しかも格闘技から始めた身だ。
この転生先ともいえる世界で初めて出会えた昔の知己、中也と離れがたくって、
ついつい護身術を身につけたいと粘ったのが始まりで。
そこから次々と見覚えのある顔ぶれとの“再会”を果たし、
ついでに彼らが前世の記憶を取り戻す中、
だったらあの虎の子とも再会できないかと、
一般の人の目にも止まりやすいスポーツとして選んだのが
フィギュアスケートだったという順番だから穿っている。
そんな彼らなのでフィギュアに限っての“キャリア”は どちらもほんの数年であり、
それが世間様の耳目を騒がしているのだから、
実力あってのこととはいえ、こちらこそ成り上がりもはなはだしいかも知れない。

「で、そのシニアにギリギリで滑り込んだクチの、
 ウチの嬢ちゃん坊ちゃんはどうしてるんだね。」

行動スケジュールを統括しているのは、
芥川のスタッフ陣営では中也嬢で、敦ちゃん陣営では国木田なのだが、
まずはと国木田が予定表を手に報告したのが、

「敦は調整を兼ねて2つほど選手権大会にエントリーしている。
 GPシリーズの方はフランス戦とNHK杯の内定が出ているしな。」

スズラン娘ちゃんはまだ高校生なので、
学校やリンククラブ所属の若手が出場する大会にも資格的には参加でき、
……ると思うんだけれど、世界GPにも出ているランクの人がそれって有りなのかな?
資格はあっても若い選手の参加の機会を独占するなと非難されちゃうんだろか。
観客を呼ぶ看板というか、集客率抜群な広告塔になるよと売り込んだとか。(おいおい)
通年のトレーニングは当然のことながらコツコツと積んでいるし、
日程が合えば北国組と横浜組とでの合同での練習も敢行。
のちにはペアを組むとかいう予定はないけれど、
GP大会はいろんな土地で開催されるので、
気候の違いや遠距離移動などという様々な条件付きでもいいコンデションを保てるようにと
そういう形での鍛錬代わりという色合いが強い。
北国の姫も演技に繊細さが加わって、課題だった表現力に深みを増したとの評判だし、
氷上の貴公子様も冴えた演技に柔軟性が増して、
シークエンス1つ1つのの尺が微妙に短かった難点も克服中だとか。

「芥川さんのほうは、協会指定されたもの以外では特に公式演技の予定はないが、
 アイスショー系のエキシビジョンへの出演依頼が幾つか来ていますね。」

それで報酬を得てしまうとプロとなってしまうので色々と規約に触れる。
なので、あくまでも無償の公開演技という形での参加をというオファーがあるらしく。
救済基金のための集いなどなら問題もなかろうと、幾つか話を進めてはいるとか。
今日は彼女が代表か、樋口さんがバインダーに挟まれた資料を手にそうと説明した横で、

 「それと…高速の周囲で張り込みを続けて、
  悪質な煽り運転やそれに乗じたタカリをやらかす半グレどもを十数人ほど一斉検挙したってことで、
  中原の姐さんが県警から賞状貰ってます。」

鼻の頭の絆創膏も健在の、立原くんが意気揚々と報告したものの、

  「………はい?」

中原と言ったら、芥川選手の演技指導からスケジュール管理や直接の連絡などなど
身の回りのいろいろを管理している頼もしい姐御であり。
先にも触れたが、ただただ文系、でも実は前世の記憶と体捌きの勘は持ち合わせていた芥川と、
片や、結構良家の子女でありながら曲がったことは好かないという気性からのおてんば娘で、
早くから横浜の自警団の中心人物として名を馳せていた、武闘派の遊撃隊長。
交わるはずがなかったほどに生活の場もカラーも違ったものだから、
面倒見のいい中也嬢、今でも自警団のお勤めも欠かしてはおらず、
そういった荒事にもまだ参加しているらしいのは知っていたものの、

 「…なんだそりゃ。」

この場で自警団の方での近況報告をしてどうすんだ…というか、
そんな危険なことに首を突っ込んでいたなんて
スタッフの所業として問題ないのかと感じた生真面目な顔ぶれが、
ややお顔を引きつらせて訊き返した模様。

 「公けにはなってないから大丈夫っすよ。」
 「じゃあなくて。一つ間違えたら大怪我負ってたかもしれんだろうに。」

今では、主幹の顔ぶれはほぼ過去の記憶も取り戻している。
なので、あの華やかでかつ嫋やかなミニマム美人が、でもでも実は
勘のいい喧嘩の達人なことも納得した上で承知しているものの、
前世では頼もしき武闘派の男性だったが、今の身は何をどうたがえたか腕力も体力もやや劣ろう女性なのだ。
当時の異能だって持ち合わせてはいないというにと、案じた上での国木田からのお言葉だったが、

 「ですけど、誰が制止できますかって話っすよ。」
 「う……。」

今回の大暴れも、のちに保護者の一人である尾崎紅葉という女傑がやんわりと窘めたという話だが、
大道芸やパルクールもかくやという軽快で大胆な身ごなしは柔軟性を得てむしろ以前より級が増しているらしく。
武道で基礎を固めた的確な拳撃や足蹴りの妙は、武道の段持ちでも厄介だろう堅実さもて通用するとかで。

 「まあ、太宰さんがなんやかんやとちょっかい出してくれているので、
  丁度いい歯止めになって助かっていますけれど。」

くすすと笑った樋口さんの一言で、場がぷふっと吹き出す声で満たされる。
以前がそうであったように、寄ると触ると強めの言い合いをするところが犬猿の仲のように見えて、
実はそちらも絵に描いたような美男美女同士で良い空気を醸していることが周囲にはバレバレ。

 これからが活動の本番を迎えつつ、色んな意味で相変らずみたいな皆さんであるらしいです。




     〜 Fine 〜    21.09.28.






 *肝心な新旧双黒が出て来なかったですね、すいません。
  久々すぎてどんな顔ぶれだったかを思い出しつつの書きようになりました。
  横浜陣営、名前出てた面子が少ない。(笑)

  相変わらず実情がよく判ってません。
  大間違いがあるやもですが、どうか大目に見て下さいまし。
  ジャパンオープンが10月3日だそうで、
  わあ、もうそんな?とびっくり。
  昨年からコロナ禍の影響で開催中止とか無観客とかザラだったし
  今シーズンはどうなるのでしょね。
  北京だったかの冬季五輪も近いんじゃなかったか。



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