銀盤にて逢いましょう


□寝言は寝て言え
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前世の太宰が全身傷だらけなのを隠すように包帯まるけだったのは、
加療中の怪我の手当てや保護というよりも、
回復力があろう若いに関わらず 消えないままだった傷跡を隠すためというのが多かった。
マフィア在籍時代に前線にて負った物騒な代物もありはしたが、
どんどん体捌きも良くなったのでしまいには返り血さえ浴びなくなったほどであり。
包帯の下にひそんでいた傷のほぼ半分以上は、本人による自傷、自殺嗜好癖からのもの。
首には縄の痕、手首にはリストカットのミミズばれの様な痕が
治る暇もなく重ねられた結果としてありあり残っているのがあまりに痛々しかったのと、
真っ当で健全なとは言えないが それでも鬱や弱気から来ているものでなし、
妙に同情されたりするのは鬱陶しいからだったらしいけど。

 「……。」

転生した今の生でも包帯常備の身なのは、微妙に事情が違うらしく。
やはり頭が良すぎて退屈な日常に飽いた結果、
裏社会の世界へ首を突っ込み、要らぬ怪我を多数負った名残だそうで。
相変わらず勘もいいし体さばきは軽やかだし、近接戦となっても関節技は得意らしかったが、
いかんせんまだ十代そこそこの少年には早すぎた修羅場が多々あったため、
障害が残りかねないような危機一髪な事態も多く。
そんなことが縁で、やはり裏社会の雄だった中島さんチの
ちょっと事情ありなお嬢様の近侍にと抜擢されたという順番だったそうで。

 「こそばゆいよ、中也。」

風呂上がりなど包帯を脱衣場で巻き直してくるものの、
それでもたまに隙間から覗くそれ。
湯にあたって赤みの増した古傷が、あの頃のとは趣が違うなぁなんて、
ついつい 傍まで寄っては肩とか背中とか 細い指先でなぞってしまう奥方だったそうな。




  __ 転生とやらを経ての再会だなんて、誰が真に受けてくれようか


異能力なんていう不可思議な性質だか能力だかを持つ存在が
石を投げればあたる級で割といた世界。
裏社会における抗争も、そういう手合いが参入したことで苛烈を極め、
普通一般の犯罪を監視し取り締まる警察だけでは足らず、
荒事を鎮圧するべく特化した“軍警”という組織まで誕生。
龍頭闘争により荒れ果てた租界を中心に、
SF一歩手前な超常現象込みの修羅場を駆け抜けた人々がおり。
人とは違う身なのを勘違いして調子に乗る者がおれば、
人外な身なのだと重荷に感じる者もある中、
降りかかる火の粉を払うつもりがガンガンと巨悪を打倒してしまい
それゆえに標的視された及び腰な少年と、
卓越した異能を天才策士に見初められ
精神面へも効率よく飴と鞭を振るわれての育成された 裏社会の最強候補な青年とが。
様々な思惑が錯綜する混沌の渦中にて、
殺伐とした出会いをし、色々謀られたまま共闘し、
互いへ憎悪を向けつつも 実力へは信頼を築きながら成長してゆく日々を送り。
それをさりげなく見守る周囲、だったりしたのだが。

  そんなの何処のファンタジー系少年漫画のお話?と
  聞いた端から半笑いされてしまうよな、
  平和ボケしまくりの別世界だか別次元だかへ 各々散じた恰好で転生した一行で

顔を合わせても しばらくほどは気がつかなかったのはどっちだったか。
太宰はきっと癪だから言わないだろうし、
中也の側も 当人に会ったその折はただの敦ちゃんの付き添いという感覚しか持たなんだので、
つけつけと追及されたら墓穴を掘りかねないから言わないつもりじゃああるが、
それでも 自然と気がついての思い出したので悪くはないぞと
精いっぱい胸を張るつもりじゃあある所存。
当時と変わらぬ相性のまま、
憎まれ口ばかり叩いてしまうそんな中。
それでも自分を深く理解する“相棒”が、当時ほど不快ではないのが不思議でならぬ。
かつては同性だったのが今回は男女に分かれてしまったが、
“中也への気遣い”として いかにもな女扱いはしないのに気がついて。
気が強い男勝りだが、かつてのような絶対の力は使えぬ身でしかも女性。
かつてとは違う方向での憤懣や歯がゆい想いを山ほど抱えたんじゃあないかと察したうえで、
対等扱い、何なら自分の側がおどけて言い負かされる役まで負ってくれ。
それへ “…ち、照れるじゃねぇか”なんて方向で受け取ってるところ、

 『ラブラブですねお二人vv』

なんて虎の子ちゃんから楽しそうに冷やかされもして。
事情が分からない人には “???”だろう、
これといって変わったことなんかしてはない あれこれにひそむ、
ややこしい気配りとか絶妙な阿吽の呼吸とか、
気づいてる自分だけが悶えていたらば、判ってくれる子がいるのがまた嬉しい。

 『…ややこしい話だよね、実際。』

ややこしい身あるあるを、そこまで判ってくれる同じ転生人がいること幸いに思う、
そんなまで何かとややこしい人たちが、
ちょっと離れている滞在地から公然と集うようになる季節がやって来た。




to be continued.






 *シーズンが始まったのでとりあえず何か書いてみたくなりましたが、
  何ですかあのロシアの新しい妖精ちゃんはvv
  人材有り余ってますな、ロシア。凄い〜〜vv
  そして…タイトルからしてお察し下さってそうですね。
  またもやあんまりスケートは関係ない話になりそうです。すいません。


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