ヒロイン生活始めました。

□11.巨人
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『ジャジャーン!!とうとう(変態パンツを脅して)異世界から進撃の巨人ゲットして参りました〜!ってな訳で早速上映会といこうか!』
「いや待って!?いきなり人んちに来てとんでもないことサラッと言ったけど!?ちゃんと説明して凛ちゃん!?」








休日の今日、待ちに待った進撃のDVDを全巻携えていーちゃんのお家に遊びに来た私。

たまたま家に勢揃いしていた兄弟たちに、ライオンキングのシンバをお披露目するかのようにDVDを抱えて見せた私に、兵長が冒頭の鋭いツッコミをいれた。



『あ〜、そういや言ってなかったよね〜、』

ってなわけで、なんだかんだ言わずにいた変態パンツと私の関係をざっくりとみんなに説明することに。

『じゃあみんなに私の秘密を教えてあげよう!』








アカツカ商社勤務の普通のOLだった私は一年ほど前、会社の経営方針が大きく変わったことにより一気に無気力状態に陥り、その結果変態パンツに目をつけられ怪しい薬の被験者となった。勿論その時私は被験者になる気などなかったのだけれども。

こうして意思とは反対に被験者になった私だったけれど、変態パンツの薬は直前にあった嫌なことを忘れてまるで自分が他の世界から来たかのような幻覚を見せる薬だった為、あの時の私にとっては最高の治癒薬となったのだ。(解せぬ)

しかもその薬で植え付けられた記憶は実際にある世界を見せていたもので、その世界には進撃も銀魂も存在していたため、私は被験者になった報酬としてそれらのDVDと漫画を変態パンツから(無茶を言って)異世界から取り寄せたのである。以上!


『って訳だからみんなで兵長見よう♪』
「以上!じゃないよ!?ちょこちょこシリアスなかんじでてたし異世界とかスケール大きすぎだしそれで"そっか〜、じゃあ見ようか"ってならないからね凛さん!?」
やだな〜トッティ。最近ツッコみ多くない?
「………コロス、デカパンコロス。」
「お、落ち着くんだいちまぁぁぁつ!」
あれ?なんでいーちゃんおこなの?新八ニャンコ優しく撫でてるけど顔マフィアみたいだよ?
「ていうか僕はむしろこのDVDの表紙に嫌な予感しかしない。これ、切られた幻の一話でやらかしたヤツじゃない?」
「え、何俺ら異世界のアニメパクっちゃったの?そりゃカットされるって〜」
幻の一話?兵長、おそ松くんなんの話?
「………ちょっとデカパン狩ってくる。」
「ウエイト!ウエイトだいちまぁぁぁつ!!どこからそんな大剣出してきたんだ!?エスパーニャンコはお供のアイルーじゃないぞ!?」
いーちゃん?なにその大剣!?この世界にモンスターはいないよ!?
「エルヴィン!エルヴィンでる!?凛ちゃん!」
なぜか殺気だってるいーちゃんが気になるものの、やっと進撃に興味を持ってくれた十四松くんに私は食らいつく。
『もちろん出るよ十四松くん!』
「あっ、てことは例の兵長もでるんだ?……ちょっと気になるかも」
『でしょでしょ!?』
「いや何ちょっとDVDに興味持ってんだチョロシコスキー!!それよりもっと気にすべきことがあるでしょうが!!異世界だよ!?異世界!!ちょっと最近ボケにまわりすぎじゃない!?僕一人でツッコむの無理だからね!?」
と、またもやトッティがするどいツッコみをいれる。

もう知りたがりだなぁ、トッティ。

トッティがやたら異世界にこだわるから、私に記憶されている異世界のことを納得いくまで話してあげた。なのに結局一番話を聞かないっていうね………なんなのこの子!?

そしていまだおこないーちゃんに、被験者になったことでいーちゃんたちにも出会えたんだよ、と話せば、やっと大剣をしまって頂けた。やばい、愛されてるんだなぁ、私。にやけちゃう。


エヘヘ、とニヤける私に"きもっち悪っ"とトッティが毒を吐いたことで、ようやく進撃の上映会をスタートしたのだった。




















「もう〜無理!!なんで巨人が人間食べるわけ!?しかも吐き出すなら最初から食べなきゃいいじゃん!?きもち悪い!!夢に出そうなんだけど!?まだ早いけど僕バイト行ってくる!」

最初に脱落したのはトッティだった。上映中もおそ松くんの背中に隠れながらなんとか見てたんだけど、巨人が吐いた消化途中の人間の塊を見るなり部屋を飛び出していった。
トッティ午後からバイトだったのか。なんだかんだ猫カフェ店員続けてるらしい。

「十四松、そろそろ俺たちもハートフルキャットの時間だぞ」
「あいあい!」

トッティが部屋を飛び出してから30分後、施設のバイト時間になったカラ松くんと十四松くんが途中退場。……前から思ってたけど、カラ松くんハートフルキャットって施設名、絶対気に入ってる気がする。必要以上に彼から"ハートフルキャット"という言葉を聞かされてるもん。

『止めておこうか?十四松くん』
「んー、エルヴィン見れたからもういいっす!」
『カラ松くんは?』
「……フッ、実は2時間前から内容がディフィカルトで理解できていない」
『いや冒頭だよね!?』

こうして残ったのは本日仕事が休みの私、いーちゃん、兵長と年がら年中夏休みのおそ松くん。

「分かった、ぜってーこいつ巨人だって!あとたぶんこいつらも仲間じゃね?てかちょいちょい兵長出る度にチョロ松がちらついてウザったいんですけどー」
「うるっさいなクソ長男!!いちいち自分の推理披露するなよ!気が散るだろーが!」
「まじで黙ってろクソ長男。」
『今いいとこなんだから!』
「えぇー!?」

結構冒頭から上映の邪魔をしていたおそ松くんだったけど、話が進むにつれヒートアップした私たち3人により追い出されリタイア。

「べつにいいし!施設行ってあいつらにかまってもらうから!」
「弟のバイト邪魔しに行くなよクソ長男!!」

きっと1時間後には次男にげんこつを食らって帰ってくるだろう。しかしながらその1時間は私たちにとっては物凄く貴重で、最後のDVDを邪魔されることなく観了した。



「うわ〜!!いいとこで終わったぁぁぁ!」
「……え、続きは?」
『残念ながらアニメは今のところここまでなんだよね。漫画なら続きあるよ、見る?』
「「見る!!」」

食い気味できたいーちゃんと兵長に、私は後日漫画を全巻貸し出した。

「……フヒッ、兵長最高。」
「ほんとカッコ良すぎだよ兵長!僕なんかが兵長なんて呼ばれてるなんて恐れ多すぎる!」
『いや〜私は二人を同じ沼に引きずりこめたことに感謝だよ!さすがリヴァイ兵長!』

こうして私はこの世界に進撃ファンを増やすことに成功したのだった。

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