ヒロイン生活始めました。
□02.兄
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■チョロ松side■
センバツから帰ってから、一松の様子がおかしかった。
毎日9時頃家を出て、6時過ぎに帰ってくる。
アイツが家にいないのは珍しくもないけど、昼に一度も帰ってこないのはおかしい。
そう思って本人に問い質したら、猫の保護施設の研修を受けていると言い出した。
……え?研修?……え、え!?ちょ、ちょっと待って!?一松……し、就職する気なの!?
猫カフェでバイトしてたのは知ってたけど、まさかそれもまだ続いていた上に、さらにその猫カフェのコネで保護施設に就職とか……お前何なの!?僕なんて父さんの知り合いの会社辞めて来ちゃったんだからね!?やめて!?一人で勝手に自立とか!!…いやそもそも僕が言えた義理じゃないけど!!
で、その約二週間後に、結局一松は一人仕事を決めてきて、しかもアカツカ商社の成瀬さんを家に連れてきて付き合ってると宣言してきた。
…………いやいやいや!?僕ツッコむとこ多すぎだよね!!
一松が就職!?一松に恋人!?てかアカツカ商社の成瀬さんとどこで知り合いに!?……は?つーか僕以外みんな知ってたわけ!?
みんな成瀬さんと知り合いのようで、おめでとうだとか一松をよろしく〜だとか今すぐ爆発しろだとかまさにディスティニーとか言ってる。……待って、蚊帳の外なの僕だけ?
一松は僕以外にはちゃんと報告してたんだ……。
あのクソ長男とクソ次男さえ知っていたのに。
僕は一松のすぐ上の兄なのに。
そう思ったら寂しくて、そして無償に腹が立って、一松を避けてしまった。
僕を見つけるなり謝ってこようとする一松を避け続けて4日も過ぎると、一松は常に涙目でいつもの倍闇を背負い始めたから、流石に可哀想になっていい加減許してあげようと思ったんだけど、避け出した手前、なかなか僕も一松に声をかけることができずモヤモヤしていた。
それを見かねて僕たちの仲裁に入ったのはおそ松兄さんで。
……なんだかんだ言って、やっぱりこういう時は長男が頼りになる。……認めたくないけど。
一松が僕に彼女の話を出来ずにいた気持ちは分からなくもないけど、やっぱり僕は一松の直属の兄だし、もっと頼れる兄でいたいと今回の件で思ったんだ。
だからこれからは、僕から一松に歩み寄ってみようと思った。
それから僕は週に2度程、一松と彼女がいつも猫に餌を与えている路地裏にお邪魔させてもらってる。
お邪魔、と言っても別に二人を邪魔しに来ているわけじゃない。あくまで一松に歩み寄った結果だ。
初めはアカツカ商社の美人で一軍な一松の彼女のことを直視するのは緊張しまくって会話するのも困難だったけど、成瀬さんから凛ちゃんと呼ぶようになった頃には、彼女の一風変わった性格のせいもあって、今では普通に話すことが出来るようになった。……その代わり、一松の僕を見る目に殺意を感じるようになったけど。
それでも僕はこの路地裏に来るのをやめることはできそうにない。
だって、こんな美人とお知り合いになんてなかなかなれないし、一松のこんな幸せそうな顔が見れるんだから、やめられるわけない。
「……いやマジで邪魔なんだけど兵長。」
『あはは!いーちゃんも兵長呼び定着してるし!』
「いやだから兵長ってそもそも何!?」
『兵長は兵長だよ!人類最強の男!!』
「……チョロ松兄さんにその称号はないわ〜、ないない。ね?チョロシコ兵長。」
『チョロシコ兵長って誰だ!?』
………やっぱりこの路地裏に来るの、やめてやんない。
おもいっきり一松の邪魔してやるんだからな!!