銀魂長編 〜英雄の凱旋〜

□第1訓 エピローグ
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ーーーもう1つの銀魂最終章。
 画面にいくつもの映像が流れていく。
 交わされたいくつもの言葉の数々。
 刻まれた戦いの記憶。
 そして、紡がれてきた物語……。
 その全てが、走馬灯のように駆け抜けては、消えていく。

ーーーー銀魂連載から10年。遂に銀時と高杉、
因縁の決着が着き、時代は平成へと移り変わる。

「おめーら席つけー。ロングホームトレイン始めるぞー」
「先生、ロングホームトレインじゃなくて、ロングホームルームだと思いまーす」
「ゴリラは動物園に帰るように。おめーら、ロンゲホームアローン始めるぞー」
「先生、それじゃロン毛の人が家でひとりぼっちみたいでーす」
「ヅラはちゃんとカツラを取りなさーい。ロングホームルーム始めるぞー」
「ちゃんと知ってるじゃないですか。てかこれ地毛です。いい加減訴えますよ」
騒がしい教室の中。
ーーー突然勢い良く開かれる扉。
「坂田先生! 大変です!」



「相変わらず平和ボケしてやがンなァ…」
ーーーー平和な学園に、突如訪れた危機。



「おめーは…!」

「久しぶりだなァ…銀時”……いや、今は銀八”か?」
ーーーー出会うはずのない二人。
思い出してはならない記億。

「壊してやるよ……何もかも!」

ーーーー誰も知らない、銀魂を見届けろ。

劇場板 3年Z組銀八先生 〜紫紺の隻眼〜






モニター画面を一人の男が見ていた。
「……よし、来週から銀魂、こんな感じでいってみっか」
「いけるかァァァァァ!!」
 ドガシャァァァン
 と、メガネの青年と赤いチャイナドレスの少女のツッコミが男の後頭部に決まり、男の顔面がモニターにめり込んだ。
「いい加減にしろよ! どんだけ同じ過ち繰り返しゃ気がすむんだよ!! どんだけ映画やるやる詐欺やりゃ気がすむんだよ!!」
「何で予告に私出てないアルか!」
「そこ⁉ てかこれ3年Z組版でしょ! 銀魂じゃないじゃん!」

痛ってーな、と後頭部をさすりながら銀時は立ち上がり言う。
「最近のアニメ業界は不安定なんだよ。これくらい変化ねェと、視聴率上がんねェだろーが」
「変化て思い切り変わってんじゃねーかアァァ!てかこれ小説でしょ⁉アニメ関係ないじゃん!」
「しかも原作より思い切り未来に行っちゃってるアル。平成になってるネ」
あーもう!と、新八は頭を抱えこむ。
「今回は過去編でしょ! 確かまだ銀さんがまだ白夜叉と呼ばれていた時……攘夷戦争の頃のお話です!」
「えー、じゃあ今回私の出番はないアルか……
チッ…」
「神楽ちゃん、最後に何か聞こえたような気がしたんだけど……」

「まっ、馬鹿二人は置いといて……今回は攘夷戦争の頃の話だ。主役はもちろんこの銀さんだが……
今回の重要人物はあのクソチビ、高杉晋助だ。
腹立たしいことこの上ないけどな。あのプルトップがまた何かやらかすみてーだが……ったく、あいつ面倒事ばっか持ち込みやがって……」

「何か色々あるみたいですが……兎に角!今回は攘夷戦争編をお楽しみ下さい!」

「因みに夜兎族の出番はあるみたいネ」

「その間に俺はジャンプでも読んどくか」

「あんたは仕事しろォォォ‼」
銀時がジャンプを広げた瞬間、新八の飛び蹴りが決まり、ジャンプが宙を舞った。































今、あなたには大切な人がいますか?



もしいるなら、その存在を当たり前だなんて思わないで下さい。

知って下さい。
この世に当たり前なんてないということを。
たとえどんな親でも、親がいなければあなたは生まれて来なかったことを。

あなたが今この時代を選び、このときを選んで生まれてきたこと。
今このときを選んで大切な人達と出会ったこと。
偶然だなんて思わないで下さい。
あなたが生きている日々が、どんな記念日なんかより、どれだけ素晴らしいことか。

知って下さい。
平和は決して当たり前ではないことを。
戦争がないことだけを平和というのではないということを。
平和は、あなたが目の前の1人を大切にすることから始まるのだということを。
  
忘れないで下さい。
私たちがいるこの世界は、数々の犠牲の上に成り立っているものだということを。
















1つの命が消えて、3年の月日が流れた。

「……」
 銀髪の青年、坂田銀時は胡座をかいてただひたすら、目の前の男、坂本辰馬を見つめていた。
 この男は一体何を考えてこのような行動に出たのか。馬鹿じゃないのか。いや、こいつが馬鹿なのは嫌でも知ってるけれど。リンゴは赤いと同じくらい常識だ。
「次、おまんの番じゃ」
  諭され銀時は、黒と白が散らばったボードに目を落とす。大半以上が黒色だが。
 そう、二人はオセロをしていた。

「なあ、辰馬」
「なんじゃ」
「なんで俺らオセロやってんの」
「そりゃ、おまん。今は休戦中じゃからじゃろうが」
「んなこと俺でも知ってンだよ。休戦中にオセロてアホか。三日後には戦がまた始まるんだぞ」
「やっぱり銀時は阿呆じゃの〜。オセロの大切さを分かっとらんようじゃ」
「お前にアホって言われんのが一番腹立つんだけど。こいつ斬っていい?ねえ、こいつめっちゃ腹立つんだけど」
「オセロによって戦略、その場でどう動くか、といった即興力も培われるんじゃ。特に銀時、おまんは何も戦略を考えずにつっこんでいくことが多い。オセロがおまんには必要じゃ」
「戦略考えんのはズラの役目だろ。大体戦ってのは戦場で決まるもんだ。てか辰馬テメェ、単にオセロしたいだけじゃねーの?」
「あははは、バレたか〜」
「ったく…ふざけんなよ…」
「ほれ、わしの勝ちじゃ」
「あ」
 辰馬の一言で、気がつけばボードの上が黒で埋め尽くされていた。目の前には憎たらしい程の満面の笑みを浮かべた辰馬の顔。
「くそッ…やってられるか!」
 オセロの一つを力任せに辰馬の顔面に思い切りなげつけてやった。奴が思い切りひっくり返ったのは放っておこう。

「なあ、ヅラ」
「ヅラじゃない、桂だ」
「今から天人のところに畳み掛けてきていい?暇すぎてやることねーんだけど」
「馬鹿者、周りをよく見ろ。此方とて負傷者は多い。皆、長期の戦で疲労がたまっているのだ。今動く元気があるのはお前と、あそこの屋根の上で横になっている馬鹿くらいのものだ」
 桂の言葉に銀時は屋根の方に目をやる。黒髪の少し小柄な青年が屋根の上で横になっていた。鬼兵隊総督、高杉晋助である。黒髪が少し風に揺れる。
 チビのくせにあの端整な顔が気にくわない、と銀時はペッと地面に唾を吐きつけた。
 なぜ俺は天パに生まれたのか。なぜサラサラヘアーではなかったのか。生まれてこの方、何度この問いを自問自答しただろう。
「そういえば、前回の勝負の決着。着いてないんじゃないのか?」
桂の声に銀時は我にかえった。
そう。前回の勝負は邪魔が入ったせいで(主に坂本辰馬)結果は137勝137敗で引き分けとなった。まだ勝負はついていない。
 このままあのチビと引き分けなんてのは気に入らない。
 なんて考えていたら、屋根の上から高杉が苛ついた視線でこっちを睨んでいた。負けじと銀時も睨みつける。また始まった、と桂のつくため息は今日で何回目か。
 「何の用だ、天パ」
 不機嫌そうな声で高杉が問いかける。休んでいたところを邪魔されたのが気に入らないのだろう。
「天パ天パうっせーよ、チビ。昼寝する暇あんならこの前の勝負の続きしろ。お前と引き分けのままなんぞごめんなんだよ」
  天パ、という単語にイラっとした銀時は思わず声を荒らげる。
「寝てなんかいねェよ。オレはてめェと違って心が広いからな。くだらねェ勝負より、次の戦のことを考えて休む」
じゃあな、と言い終えると高杉はごろりと寝返りをうち銀時に背を向ける。
「ただ寝たいだけじゃねーか」

「違ェよ。次の戦に備えて体力温存しとくっつってんだろ」

「俺に負けるの分かってるから逃げんだ」
 
「ンだと、てめェ…!」
 銀時の挑発するような言い方に、高杉は額に青筋を浮かべる。周りが疲弊しているこんな時に騒ぎを起こすのはやめてくれ、と思わず桂は頭を抱えた。

 2人とも刀に手をかけ、睨み合いが続く。

しん、と張り詰めた空気に思わず桂は息を飲む。が、その空気は意外な一言で破られた。

「…いや、今日はいい」
 高杉はそう言うと刀を収め、屋根から地面に着地し、さっさと歩いて行ってしまった。
予想外の行動に、銀時はしばらく虚をつかれたように呆けていたが、桂はほっと安堵の息をついた。こんな時に騒ぎを起こされては面倒だ。

「何だよ、あいつ。やっぱ俺あいつとは何年経っても合わねーわ」
 呆れた表情で銀時はやれやれ、と刀を収める。

 桂には思い当たる節があった。
「銀時、今日は何の日か分かるか」

「はあ?急になんだよ」
  思わず怪訝な顔をする銀時。
「ヅラの誕生日…でもねーし、あのクソチビでも辰馬のでもねェな」
 うーん、としばらく唸っていた銀時だったが、突然、あっと声を上げた。桂がゆっくりと頷く。高杉のあの行動も恐らくそれが理由だろう。

 あの日。あのとき。ひとつの命が消えた日。
「…あれからもう3年か…」
   銀時の呟きは誰に向けられるまでもなく、どこまでも真っ青な青空に溶けていった。
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