Story
□バレンタイントラブル
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**ヴィクトルside**
天気が。
そういう理由で、ヴィクトルの撮影は長引いていた。
ヴィクトルは今、一人モスクワに居る。
午前中は近くのリンクで練習できるものの、午後はホテルで待機。
「…」
ヴィクトルは衣装に着がえたまま、ラウンジでコーヒーを飲みながらため息をついていた。
そろそろ帰らなければ、14日に間に合わない。
「ごめんなさい、ヴィクトル」
そう声を掛けられて、ヴィクトルは顔を上げる。
いつもより濃い化粧が、サングラス越しでも分かる。
「お詫びに、近くのレストランにでも…」
「…。とりあえず、座って」
ニコリと笑って席を勧めると、女性はいそいそと座った。
今回の企画のプロデューサーだ。
仕事は何回かしたことがあり、出来る女性、といった感じの印象だった。
ただ、それは補佐としての場合のようだ。
今回は初めての、彼女主体の企画だった。
「ごめんなさい。今日の雪もイメージが違うので」
「もう2日オーバーしてるよ。これ以上俺、待てないなぁ」
「申し訳ないと思ってるわ。でも…」
「俺が、待てない、って言ってるの」
「…!」
「ね…」
ヴィクトルは女性に顔を寄せた。
「そんなに俺と一緒に居たい…?」
ひとさし指で顎をすくい上げる。
「…!!」
言い当てられた、という表情を女性から見て取ったヴィクトルは、話を続けた。
「じゃあさっさと撮影再開して。俺を拘束した罪は重いよ。もう俺、君の会社の広告出ないかも」
低い声でそう言って投げやりに指を顎から外すと、ヴィクトルは席を立った。
「俺が戻ってきたら、すぐに撮影始めれるようにしておいてね」
あざとくウィンクをすると、ヴィクトルはトイレに向かっていった。
10分後、無事に撮影は再開し、ハイスピードでそれは終了し、無事に14日、ヴィクトルは勇利の元へ帰れたのでした。
and…