Story

□Verifiable
2ページ/2ページ


電気を消すと、カーテンの隙間から月の光が届く。

浮かび上がる、白い肌。

僕はヴィクトルに、手を伸ばす。

「今日は、こういうプレイ?」

そう言ってヴィクトルは笑った。

「うん」

そう返事をすると、ヴィクトルは軽くため息をついて、そのままベッドに座っている。

銀色の髪を掬うようにして彼の頭を撫でる。

キラキラ、と、時折光を反射するそれは、まるで宝石のようだ。

「ふふ、くすぐったい」

ヴィクトルはそう言って笑っている。

「もっと、良く見せて」

僕はそう言って、ヴィクトルの頬に手を添える。

青緑の瞳が、どうぞお好きに、と言っているようだ。

する、と項に手を滑らせ、そのまま鎖骨、肩へ。

「…」

僕はもっと触れたくなって、彼と額を合わせる。

ヴィクトルからは、触ってこない。

別段駄目と言っている訳ではないのだから、彼はそうしたくてそうしているのだろう。

僕は両方の肩を掴み、キスをしようと彼に近づく。

ヴィクトルの肌の匂いと、微かな彼の香水の香り。

熱、を感じながら、唇を触れ合わせた。

(やわらかい…)

触れるだけにして唇を離す。

と。

不機嫌な顔。

ヴィクトルは顎を少し上げると、薄らと唇を開く。

僕は誘われるまま、彼にキスをした。

柔らかい唇の奥の、熱い舌に僕の舌が絡め取られる。

「んっ、ふ…」

「…ぁ」

どちらともなく、声が漏れる。

するり、とヴィクトルの手が僕の服の下に滑り込み、腰に触れる。

そのまま愛しむように、背中を撫でられ僕の体は震えた。

ゆっくりと、唇を離す。

「…勇利も脱いでよ」

「ん…」

ばさり、と上着を脱ぐ。

全部?と聞いたら、全部、と答えが返ってきた。

ヴィクトルは枕を集めて背もたれをつくると、そこに背の預けた。

「勇利、まだ続ける?」

「うん。もう少し…いい?」

そう聞くと、OKという柔らかい声が返ってきた。

僕はまた、彼に触れる。

鍛えられた胸筋を撫で、ほんのりと色づく程度の胸先に触れる。

零れた声に、心臓が高鳴った。

でも、僕はそのまま手を滑らせて行く。

美しい腹筋をなぞる。

「…」

両方の膝に手を添え、大きく開いた。

本人の様子とは違い、恥ずかしげに色づくそれに目を留める。

「勇利。楽しい?」

「楽しい、というか」

僕は改めてヴィクトルの腰を撫でる。

そのままするりと太ももに手を滑らせた。

「なんか、こう…」

僕はぽつり、ぽつりと心の内を吐露していった。

「たまに、だけど」

ゆっくりと、手のひらが膝に届く。

「ヴィクトルの、側に居るのが不思議に思える、というか」

「不思議?」

「うん」

片方の手は膝に置いたまま、もう片方の手をヴィクトルの頬に添える。

ふにふにと親指で頬を撫でると、ヴィクトルは気持ち良さそうに目を閉じた。

「これは全部僕の夢なんじゃないか、みたいな」

「こんなに一緒に居るのに?」

「だからたまに、だよ」

「ふうん?」

「だから、こういう風に、触れて…。なんていうのかな、確かめたい、っていうか…」

「…確かめたい?」

「うん」

「スキンシップなら、結構しているつもりだけど…」

「普段の、そういうんじゃなくて」

「うん?」

僕は一頻り考えてから、口を開いた。

「心で」

その言葉は、静かな部屋にやけに響いた。

ヴィクトルは不思議そうな顔をして、こちらを見た。

「心で?」

「そう」

僕はヴィクトルの頬に触れていた手を、彼の体に滑らせて行く。

美しい、体。

僕が鍛えても、こうはならないだろう。

「ゆっくり…。こうする事で、ここにヴィクトルが居るのを感じられるというか、心に刻むというか…」

「何となくは分かったよ。こういうのが、勇利の独特のセンスに繋がるのかな」

そう言って、ヴィクトルは笑った。

滑らせていた片手も、膝の上に留まった。

「…」

ぐい、と僕はまた大きく膝を開かせる。

その体の、奥の置くまで暴くように。

「…勇利は、どうしたい?」

「どう、って?」

「トップとボトム」

「…」

僕達はまだ、体を繋げた事がは無かった。

それなりにそういう行為はしてきたものの、なかなかそこへは進まなかったのだ。

「正直俺は、自分がボトムになるイメージ無いんだよね」

「…実は、僕も」

「そうか…。男同士だからなぁ」

ヴィクトルは僕の顔に手を伸ばし、メガネを外させて側のサイドテーブルに置いた。

そこには色々と、そのための道具も置いてある。

「勇利、手、貸して?」

ヴィクトルはローションの入ったボトルを手に取ると、差し出された勇利の手にそれを落とした。

「ヴィクトル…?」

「触って良いよ」

「でも」

「俺の気が変わらないうちに」

ヴィクトルの気まぐれか何かなのか。

僕はそれを両手に馴染ませると、ヴィクトルに向き直った。

そっと、その閉じられた蕾に手を伸ばす。

ローションを塗りこむと、艶やかに光り…。

「…ヴィクトルは、こんな所も綺麗なんだね」

「そう?」

自分じゃわからないからなぁ、とヴィクトルは呟いた。

つる、つる、とそこに触れる。

「ヴィクトル、大丈夫?」

「ん」

少し奥へと指を進めると、ヴィクトルの体が揺れる。

「これは、平気?」

「平気…。勇利」

「何?」

「キス、して」

「あ…」

僕は体を起こすとヴィクトルの頬に触れ、彼の下唇をそっと食んだ。

「…っ!」

パクリ、と大きな口に食べられた。様に思った。

ヴィクトルは思う様、僕の口内を犯してゆく。

これではどちらが抱いているのか分からないじゃないか。





体に起こる違和感から気をそらすため、勇利にキスを強請った。

勇利の舌が熱い。

高ぶっているのが分かる。

「ふっ、ぁ」

唾液が口の端から漏れ、伝う。

正直、体を開くのには抵抗がある。

それは自分の気持ち、というよりは生物本来の反応のようで、自分ではコントロールが出来ないと感じでいた。

だから、勇利に壊して欲しい。そう、思った。

くちゅり、と、勇利の指が増やされたようだった。

「ヴィクトル、平気?」

「駄目な時は、言う、から…」

「…うん」

勇利は素直に頷いて、俺の首筋に顔を埋めた。

柔らかい唇が、首筋に触れるのが、たまらなく心地よい。

勇利の匂いと、熱い体温に溶けていってしまいそうだ。

勇利は俺の体にキスを次々に落としながら、中に入れた指を動かしてゆく。

「うっ、わ、ちょ、ヴィクトル」

足で勇利の屹立した物に触れる。

動かすと勇利は慌てた。

「ふふ、凄いね」

「そ、れは、そうだよ…」

はた、と、勇利の視線は俺のものに留まった。

「…ヴィクトル、これ、は好きじゃないんだよね?」

そう言って、勇利はくったりとした俺のものを口に含む。

「ん、あまり好きじゃない、かな」

「じゃ、これは?」

勇利はそれから口を離し、代わりにべろりとそれを舐めあげた。

「ん…」

俺が何も言わないのをYESと取ったのか、勇利はそれを繰り返しながら指を動かしてゆく。

指自体は、あまり違和感を感じなくなっていた。

ざらりとした熱い舌が舐めあげるたび、ぞわりとした感覚が起こる。

あっという間にそれは、欲情した。

「っ、は、勇利…」

名を呼ぶと、勇利は顔を上げる。

すごい、と呟くと、そのまま唇を奪われた。

拙くて乱暴な、俺を欲しがっているのが分かるキス。

もっと、もっと。

俺に夢中になれ。

離れるなんて二度と思わないように。

「っ、は、はぁ、は」

唇が離れると、荒い息遣いが部屋に響く。

いつの間にか増やされていた指が、ゆっくりと引き抜かれていった。

勇利はサイドテーブルにあるローションに手を伸ばす。

俺はぼんやりとそれを見ていたんだけれど…

(何だ、これ…)

体が、熱い。

思考が上手くまとまらない。

と、ひく、ひくりと体がびくついた。

「ヴィクトル?」

勇利が心配そうな声を出した。

「ゆ、り」

「どうしたの?大丈夫?」

勇利の指があった所が、疼いているようだ。

俺は勇利に抱きついた。

「ゆ、り、熱い…」

「熱い?ねつ?あっ、氷枕持って来ようか?」

焦って真剣な勇利に、思わず笑ってしまった。

「さっきのとこ、触って」

「さっき?」

「俺の、中」

そう言われて、勇利は一気に顔を赤くした。

何を今更と思うのだが、勇利らしいと言えば勇利らしい。

勇利は慌てた様子でローションを足すと、指をそこに当てた。

先程より余程スムーズに中まで届く。

「ヴィクトル、ここ?」

「ん、」

腰を動かして、勇利の指を誘導する。

「っ、ふ…!」

「っ、この、辺?」

「多分」

勇利はゆっくりと指を動かした。

気持ち良いのかどうか、正直良くわからない。

でも勇利がそこを撫でると、体中に熱が溜まっていくようだ。

「っ、あ!、あ、は」

いつの間にか声が出ていた。

「あっ、あ…、ぁ」

「っ、ごめん、ヴィクトルっ」

「…っ?…んぁっ!」

突然指が引き抜かれたかと思うと、それとは比べられないものが中に押し入ってきた。

「ぁあっ、あ…!あ!」

「っす、ごっ、熱…っ」

俺はふるりと体を震わせる。

勇利の一番大きいところを飲み込んだ為だろうか。

キツさは無くなったものの、苦しい。

苦しさを逃すために、何度も息を吐いた。

「ヴィクトル、ここ、だよね?」

「ぅ、ふっ、んんっ」

勇利は俺の腰を掴み、浅い挿入を繰り返す。

「ゆう、り」

揺さぶられる体で、何か文句の一つもいってやろうと、勇利を見る。

でも。

顔を上げた勇利を見たら、何も言えなくなってしまった。

こんなにも、切なげな顔は見たことが無い。

俺を、俺だけを求める、その姿。

俺は勇利に手を伸ばして、引き寄せた。

勇利は俺の耳にキスをすると、そのまま腰を動かし続けた。

荒い息使いが、俺の欲を更に煽った。

勇利の背に手を回し、肩を掴む。

「あ、あっ、あ」

「っ、ヴィ、クトルっ」

勇利の動きが早くなる。

「ヴィ、んっ…!、っ!」

勇利は一瞬息をつめると、体をふるりと何度か振るわせた。

勇利は大きく息を吐く。

そうしてゆっくりと、体を起こした。

「あ…」

勇利は達していない俺に目を留めると、それを手に握りこんだ。

「はっ、んんっ、ま、て、ゆうりっ」

静止の言葉も聴かず、勇利は手を動かす。

直接的な刺激が、いつもよりも強く感じる。

それに勇利はまだ萎えていない。

中からも攻め立てられるようで、熱くて、苦しくて…。

「…ヴィクトル」

吐息と共に名を呼ばれて、これをしているのは勇利なのだ、と思った瞬間。

「っう、ふっ、んんっ」

俺は欲を吐き出していた。








「ヴィクトル、お水飲む?」

「ん」

俺がゆったりと余韻に浸っている間に、勇利は色々と片付けてくれていた。

キッチンから水を持ってきてくれたのは嬉しいが、もう服を着てしまっている。

「勇利」

「何?」

勇利はぎしりとベッドに上がりこんできて、俺の横に寝転んだ。

「確認、終わった?」

「確…ああ。う、ん」

「俺は、勇利の側に居た?」

「…っ!」

「ああ、違うか。側じゃなく、一つになってた」

「ヴィクトル…!」

顔を赤くする勇利に、俺は思わず笑ってしまった。

勇利も軽く息を吐いて、笑った。

「ヴィクトル、その、平気?」

「ああ、まあ…。たぶんね」

「ごめん…、その、止まれなくて」

「ああいう時、止められないのは分かるし…。それに」

「?」

「勇利がどれだけ俺を求めてくれているか、分かったしね」

「!!」

俺が機嫌よく笑うと、勇利は照れたような、少し怒ったような顔をした後、笑った。

俺は勇利の首筋に手を伸ばす。

勇利はそのまま引き寄せられて、俺の唇にキスをした。

「勇利、今度は俺にさせてね?」

「っ」

勇利の顔を上目遣いに覗きこむ。

「…」

「…」

「わかりました」

「え?良いの?」

「良いのって、ヴィクトルが言ったんじゃないか」

「駄目って言われるかと」

「…男に二言は無いよ」

決心したように言う勇利に、俺はまた笑う。

「次の休み、楽しみだね」

「え?次?」

笑いながら、囁きながら。

いくつかの言葉を交わしながら、俺達は布団に潜り込む。

明日は休みだし、少しぐらい寝坊しても良いだろう。

朝食は、勇利ね。

…はい。ああ、でもあまり材料がないかな。

卵あるよ。

目玉焼き?

卵焼きがいいなぁ。

そんな事を、言い合いながら。





end


次の章へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ