連載のブック

□おわり
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「ありがとうディーヴァ!」
「やっぱお前の歌のほうがテンションあがるわ!」
「皆さん、私があの声を打ち消します!だから攻撃に集中してください!」
「わかった!」
「いくぞ!」
『汚染された歌なんて聞きたくないわ!!』

ディーヴァの歌に戦力を上げたメンバーは攻撃をつづける。
やがて、声量の振動と反動に彼女の体がついていけず、ポロポロと部品が崩れ落ちた。

『 ーー ーーーー!』
「歌がブレた!あれを壊せば歌がなくなるぞ!」
「もういっちょいくかぁ!」
「総攻撃だっ!!」

その合図でディーヴァ以外が総攻撃を仕掛けた。

『 !!』

彼女を作り上げたパーツが崩れる。溶けるように、砕かれたように軽い玩具を落としたような音をたてながら彼女はバラバラになって地面に倒れた。
瓦礫の中からシャドウ堀野がよろけながら這い出てきた。

『くっ…くそ……ひぃっ!』
「これでテメーだけだぜ」
『たったたた、助けてくれ!俺が悪かった!命だけは助けてくれ!もうしない!これからはちゃんとプロデュースしていく!!』
「…醜いな」
「ほんとよ、あんたなんかプロデュースする資格はないっての!」
『か、彼女にも謝る!今までしてきたことの詫びをいれる!金だって払う!だから見逃してくれ!』
「根性が腐ってやがるな…」

コツン、コツン
一番後から、ディーヴァが近づいてきた。そして彼の前で立ち止まった。

「もう、この仕事辞めて自首しましょう」
『なっ!』
「聞こえなかったんですか?自首しましょうって言ったんです」
『ふざけるな!ここにたどり着くまでにどれだけ、ヒィィィ!!』

ディーヴァは銃で彼の横に二三発打ち込み、話を止める。

「ここにたどり着く前にあなたが踏みにじった人たちは努力さえすることができなかった!今までの努力を無かったことにされた!貴方が積み上げた功績はすべてあの人たちの努力で素質だ!貴方の功績じゃない、あの人たちの功績だ!」
『…っ……』
「少しでも長生きしたいなら罪を告白して。少しでも罪悪感が存在するなら謝罪して。できないなら私が息の根を止めない程度に、撃つ」
『あーーっうわぁぁ!す、すみません!謝ります!罪を告白します!!お願いします!撃たないでくれえ!』
「こ、こえーな…」
「彼女、怒らせないほうがいいね」
「おう…」

土下座をして泣き叫ぶ彼の手からCD、オタカラを奪い取る。

「よし、逃げるぞ!」
「今度は崩れ落ちる前に逃げてぇ!」

シャドウを置いてメンバーは走り出した。同時にパレスの崩壊が始まる。
瓦礫や破片、パイプなどがむき出しになり、道の上、彼らの頭上へと落ちていく。

「長い!道がながーーい!」
「広大だから出口に近づいているのかさえわからん!」
「モルガナ、車になってくれ!」
「こんなボコボコな道走れねーよ!」
「っフォックス!」
「なんだ!」

振り向いたフォックスの仮面にディーヴァがタッチして素早く変装した。

『ブフ!』

ペルソナを召喚し、床を凍らせる。

「なんて器用なことするんだオマエ…!」
「滑りますよ!私に近い人は私に、それ以外の人は私に掴まった人に掴まって!」
「なにぃーー!?」

彼女の発言に驚き、滑り出す前に至るところに掴まり始める。フォックス、ジョーカーは彼女の手を、パンサーはフォックスの尾を掴み、スカルはジョーカーのコートの裾にしがみついた。モルガナは猫になり彼女の肩だ。
ディーヴァは振り返り、全員掴まったのを確認して氷の上へ乗り出した。

「ぐっ!スカル…」
「しょーがねーだろお前のそのコートのほうが届いたんだよ!」
「あっあぶない!こわい!」
「立てない人は座ってもいい!とにかく手を絶対に離さないで!」

落ちる天井や凹凸のある道を上手く滑っていく。

「のぁっ!」
「っ!」

運悪く足に引っかかり、スカルが体制を崩してしまった。スカルの顔が床にぶつかる寸前、ディーヴァは瞬時にジョーカーの手を勢い良く引いて二人を己の前に出した。そしてあろうことかジョーカーとの手を放したのだ。

「なっ!」

正面にでた二人を見据えて、彼女は

「「ぐぇっ!!」」

ラリアットを入れた。

「なんで!!?」
「でるよ!」
「えっえぇっ!?」

「「うわぁぁぁぁぁ!!」」





「いっ!」
「きゃぁ!」
「へぶっ!」
「ぶっ!」
「ぐふっ!」

彼らは地面に倒れ込んだ。モルガナだけ華麗に着地した。

「おーい!オマエラ!戻ってきたぞ!」
「現実…?」
「いったーい…」

のろのろと周りを見渡せば見慣れたビルや人間の歩く姿。現実に戻ってこれたのだ。

「助かった…」
「よか…よくない!ちょっと祐介!なにしてんのよ!」
「え?」

たちあがって杏が怒った。

「早くどいて!名無しのさんが潰れてるの!」
「…む?」

祐介が自分の下を見ると地面ではなく背中。さらに下に暁、竜司と重なっていた。

「すまん!名無しのさん無事か!?」
「ぶはっ…へ、平気です…それより来栖さんと坂本さんが」
「俺は大丈夫…竜司が」
「はよ、どいてくれぇ」

急いで立ち上がり、竜司を起こした。

「死ぬかと思った…」
「はっ!ごめんなさい!お二方を運ぶにはあれしか私には出来なくて…!」
「結構、キマった」
「そういうこと言わんでいい!」
「オタカラは!」

一言で全員が名無しのを見る。彼女も制服の内ポケットからはみ出たオタカラを取り出した。

「…それが、オタカラ?」
「CDだな」
「CDがオタカラ?なんかヤバイ内容でも録音されてんのか?」
「…スタジオで聞きましょうか。今日はオーディションも終わっているはずです。私の友人として通してもらえるはずです」

彼女の言うとおり、受付からスタジオまですんなりと入れて貰えた。それから機材にCDを入れて再生する。

ーーーーーー

CDは、歌だった。

「…普通の歌、だよな?」
「あぁ」
「でも、なんか……必死な感じがする」
「ふむ…伝えるような、訴えるような、なんとも形容し難いが」
「ねぇ名無しのさん、この曲知って…え」

杏が質問しかけて、止まった。全員が名無しのを見た。
彼女は泣いていた。

「どうしたの!?」
「この歌に何かあるのか?」
「…この歌は」

涙を流し、彼女は続ける。

「この歌は、私とあの人が初めて会ったときに歌ってた…私と、あの人の始まりの歌……」


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