連載のブック

□おわり
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「予告状、私が出します」
「いいのか?」
「どのみち私が郵便物を確認してますから」
「それならカクジツだな。確認が一人だけになっちまうが」
「危なくない?モルガナ連れて行く?」
「いいえ、何が私に起きても、もう、最後だから…」

予告状をカバンに入れ名無しのは微笑んだ。これから怪盗団として動く、まして相手は自分の恩師とも言うべき存在だったはずなのに。憎しみも、悲観も見せずに彼女は笑った。





「堀野さん、お忙しい中恐れ入ります」
「なんだい」
「郵便物の中におかしなものが入っていたので、一応ご確認をと…」
「…どれ」

出された手の上に予告状を置いた。
封を破り、中身に目を通す。段々と手に力が入り、紙が歪んだ。

「…ぐだらない」
「あの…」
「大丈夫だ、最近噂の怪盗とかいうのを真似したイタズラだろう」
「で、でももし本物なら」
「だからなんだい?」

有無を言わさない視線に名無しのは黙った。用がなくなった彼女はそのまま社長室を出た。彼は、警戒してくれたのかわからない。それを一刻も早くみんなに知らせなければならなかった。

彼女の報告によりすぐさま全員が集まった。

「反応がわからない、か…」
「おいおいそれどういうことなんだ?予告状失敗とか!」
「いや、人間は無意識にそのことを気に止める。気にしないという人間はいないハズ」
「ていうことはちゃんとオタカラは出現してるってこと?」
「警戒するしない以前に、認知させることが大切だ。知らないままじゃ意識もされないからな」
「じゃあ、決行は今日でいいんだな」
「あぁ!」

モルガナの言葉を信じて、メンバーは予告状通りに動き出す。
パレスに侵入したメンバーは、本番ということで現在できる最大限の装備と行動をとる。モナの言うとおり、意識しているのか守りが固く、シャドウの配置も多い。

「ルートは確保してる!ザコはほっといてさっさと行くぞ!」

流石に慣れた4人はどんどん先に進む。ディーヴァは戸惑いながら必死についていく。

「ディーヴァ!大丈夫!?」
「はっはい!」

途中で声をかけながらひたすらに走り、オタカラ部屋へとたどり着いた。覚悟を決めて扉をゆっくりと開く。

『待ってたよ…雑菌共』

中にいたのはディーヴァの形をした人形と、一枚のCDを持った堀野だった。

「罠か!?」
「いやっアイツがもってるのは間違いなくオタカラだ!」
「迎え撃つ、ということか」
『雑菌ってのはどんなに細かく消毒しても出てきちまう。だが雑菌の根源を断てばそこから繁殖を防ぐことはできるからなぁ…』
「私達が根源ってわけ?」
「てめーのほうがよっぽどだろーがよぉ!!」

スカルの言葉に彼の隣にいた人形が口をパカリと開けて、ケタケタと笑いだした。

『細菌が入り込んだらおかしくなるの当たり前だろ?テメーらのせいでコイツはおかしくなったんだよぉ!!』

カタカタケタケタ

『どうしてくれんだ?俺の大事な商品おかしくさせやがって…ここでケジメつけてもらおうか細菌共よぉ!!』

声を合図に部屋の壁や床から手や頭がぬるりと生えてきた。

「気持ち悪い!!」

生えてきたものはすべてディーヴァを模した人形である。それらは頭が落ちたり、手だけで動いたりと想像を絶した。動いた先にシャドウの彼。人形の彼女たちはカチャカチャと何かの形を作り上げていく。
最後に人の形を保っていた彼女が取り込まれた。

「でかっ!」
「ていうか、これも人形!?」
「おぞましいな…」
『あぁそうだなおぞましい!!お前らが侵入したせいでこんなに醜くなっちまったんだよ!』
「堀野さん…!」

上半身だけ作られた巨大な人形は堀野を口から呑み込んだ。

『追い出せ!殺せ!お前をこんなふうにしたあいつらを生かしておくんじゃねぇ!!』
『 ーーーー!!!』

人形が空高く吠える。口は耳まで裂け、瞳孔は2つに別れてメンバーそれぞれを見ている。全体的にヒビや溶けた部分があった。

「なんだよあの気持ちわりーの!」
「これが、ヤツの菌に侵された人間のイメージなんだろう!くるぞ!」
『 ーーー!!』

彼女の手がメンバーを狙って落とされた。避けることは簡単だったが巨大さゆえに風圧とパワーが桁外れである。

「くっ!」
「ふぎゅっ!」
「どーすりゃいんだよこんなでけーの!」
「腕を叩くか!?片腕をなくせば体重のバランスが崩れるはずだ!」
「一度それで行こう!全員腕をねらえ!」
「はい!」

それぞれ腕を攻撃し始める。物理、ときにペルソナ。巨大な手を少しずつ破壊していく。そのたびに人形を支えていたパーツがガチャガチャと床に投げ出された。

『 ーーー!!』
「うっ!耳が!」
「あとちょっとだ!!」
「蹴散らせ!ゴエモン!!」

メンバー屈指のパワータイプ、フォックスがゴエモンで腕を破壊した。

『 ーーーーーー!!!!!』

喉を締め付けたような悲鳴を出しで彼女はもだえた。バランスを取れなくなりドシンッと地面に体を叩きつける。

「いいぞー!フォックス!」
「総攻撃だ!」

ジョーカーの一言でメンバーは一斉に仕掛ける。倒れた彼女に抵抗する暇はなく、すべての攻撃を受けた。

『 ーーー!』
『あああああ!汚染だ感染だ侵食だ!気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!』
「きめぇのはてめーだろ!」
『お前らに、返してやる…!!』
「っ!皆私の後ろにさがって!」

片腕だけの彼女が大きく口を開いた。

『 』

歌を唄った。それは今までにない声量と響き。そして洗脳。

「ぐっ…う……」
「ま、た…」
「にゃ、にゃにゃ…」
「くそ…」
「チッ」
「皆さん!…スゥーハァー…」

己の声のせいか一人だけ正常に動くディーヴァは深呼吸をして、歌に対抗する。

「 」

なるべくメンバーの耳に自分の声を聞かせられる位置で歌う。しばらくしてディーヴァの近くにいるメンバーから徐々にたちあがっていった。
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