連載のブック
□Dive
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「えっ!」
「ちょっそれって」
それは全員の目を疑わせた。ガチャンと重々しく地面に置いて足で押さえて紐を引っ張りエンジンをかける。
ブォンブォンと古めかしい排気の音を鳴らせてそれは動いた。
ディーヴァが手にした武器は、チェーンソー。
「さぁはじめましょう!」
「「ちょっとまてーーー!!」」
怪盗団の突っ込み役たちが総出で突っ込んだ。
「なんでだ!なんでチェーンソーだ!?つかどうやってもってきた!!」
「音でけーよ!怪盗なんだからもっと静かなやつにしとけ!!」
「えぐい!絶対周りがヤバいことになるって!ていうかグロになるって!」
「でも、魅せるということも考慮するとちょっと派手めなのがいいかなって…」
天才はみなこうなのか。
ジョーカーは呆然とし、フォックスは「やはりディーヴァはすごいな」と感心している始末。
「と、とりあえず武器に関しては後でまた議論しよう。今は戦うことが優先だ」
「そうだな」
「よ、よし!とりあえずディーヴァはできるだけチェーンソーを使うなよ!」
「じゃあ私はなにを…」
「ペルソナの能力を見定めるいい機会だ、今回はそっちをメインにしていこう」
「わかりました」
リーダーの指示に従いチェーンソーをちょっと名残惜しそうに片付けて仮面に手をつける。
「それじゃあいきます、アイリーン!」
ぶわりとペルソナを呼び出し、攻撃態勢をとる。かと思いきやくるりとフォックスに向き直りそっと両手で顔を、正確には仮面の形を確認するように撫でた。
「っなにを」
突然の出来事でフォックスはらしくなく顔を赤らめ、一歩下がる。ディーヴァは確信したように妖美に微笑みながら腰にある布を翻した。
「ありがとうございました。少しお借りします」
「借り…?」
「行くよアイリーン」
翻した布で自分の体を一瞬隠す。彼女のペルソナも両手で顔を覆いながら天を仰いだ。
次に布の隙間から見えたのは彼女、ではなく深い青と白を基調としたデザインで腰にふわふわの白い毛並みと赤い紐がアクセントにまかれた尻尾。
ペルソナも両手を離し顔を見せる、それは真っ白いマネキン顔ではなく赤い隈取をつけた顔があった。そして服が氷のように砕け散り、赤や黄色などの派手な和服衣装に姿を変えていく。
「絶景かな」
そこにあったのはフォックスと彼のペルソナのゴエモンだった。
「なにぃ!?」
「あちゃー、やっぱりこの程度か…」
「この程度!?」
よく見ればフォックスの反逆の意思を身にまとったディーヴァであった。そしてゴエモンに似ているがどこか女性らしい華奢な部分が残るアイリーン。
「なんだぁそりゃ!」
「私のペルソナの能力です」
「これが…?」
「私、変装するのが得意だから…」
なるほど、と全員が理解はしたが頭がおいついていなかった。
「知り合ってすぐに真似をしたら、こんなもんなんですよ」
「だいぶすごいと思うけど…」
「えっと…フォックスさんはブフ系でいいんですよね?」
「あぁ、だがすごい出来栄えだな…尾の感触も同じだぞ…」
「どこに関心してんだよ!」
もっふもっふと尻尾を堪能している間、なぜかおりこうさんに待ってくれていた敵が一斉に仕掛けてきた。
「フザけるのもそこまでだぞ!」
「はあっ!」
颯爽と一体をナイフで仕留めるジョーカー、次の敵にはパンサーとディーヴァが対応する。
「えぇい!」
『ゴエモン!』
「うえっ声も!?」
女性の見た目からあの低い声がでていると思うと一瞬驚きで戸惑ってしまう。だが彼女は気にせずブフを当てて敵を消滅させた。
最後にフォックスが残った敵を切り刻み、ジョーカーも加わった。
「アルセーヌ!」
「ゴエモン!」
とどめにペルソナで技を打ち込み、戦闘を終了させる。すると用事がなくなったかのように服装は元に戻り、ペルソナもいつものドレスになっていた。
「お前マジかよ!」
「私もついさっきわかったことなので…」
「でもこれ、敵の弱点とかバンバンいけるじゃん?戦闘がもっと楽になりそう!」
「もう少しみなさんと関わったらもっと性能がよくなると思うんですけど、今はこれが限界みたいです」
「…モナにもなれるのか?」
「えっ……ど、どうでしょう…?」
戦闘を終えてわかった能力はふたつ。
歌い敵を注目させ、さらに味方の能力を上昇させる。
味方の真似をする。
それ以外のことはなにもできないという。
「ゲームで例えると…すっぴん?」
「あーわかった」
「戦闘の幅が広がるな!」
「足手まといになっていなければよかったです…」
ほっと安心した顔で返事をする。彼女の能力は戦闘でかなり重要になるかもしれない。仲間になったことを喜び、先を目ざした。