連載のブック
□誰もいないパレス
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全員が中にはいり、内部を見渡す。巨大な機材とマイク、楽器類が置いてあり、窓で2つに別れていた。
「レコーディングルーム?」
「面接した場所か?」
「似てるけど…」
パンサーは答えを濁らせている。少し違和感があるようだがそれがなにかはわからないようだ。
「ここから行くか…」
レコーディングルームの扉をそっと開けて見渡す。思ったとおり中も前回と変化し、部屋や通路が増えていた。
「今のうちに行こう」
ジョーカーの合図で外に飛び出し、探索を開始した。警備の視線を掻い潜りながら1つめの部屋へと侵入する。
「…ここは」
「楽屋…っぽいな」
「誰もいねーな」
部屋の中はTVでよく見る楽屋だった。中に人はおらず、テーブルにCDが何枚か置いてあるだけだった。
「これは?」
「えっ!!まってこのCD初回限定盤じゃん!しかも私が欲しかったやつ!」
「パンサー何か知ってるのか?」
「知ってるも何もこれ西野サナのCDよ!!」
「ってことはここは西野サナの楽屋!!?やっべぇ!まじか!!」
パンサーとスカルが興奮してCDを見つめ、中を見渡す。残りの三名は静かにしろと叱ったり中を調べていた。
「…CDしかないな」
「怪しい所は何もない。ほかの部屋を調べよう」
「ねぇこのCDもってっちゃ…」
「認知上の物をもっていったらどんな影響がでるかわかんないぜパンサー」
「だよね…」
がっくりと肩を落としてCDを元の場所へと戻した。それを見届けて別の部屋に入る。そこも似たような作りの部屋で、またもテーブルには有名アーティストのCDがすべて並べられて置かれていた。ほかのどの部屋も同じ配置に同じ家具とCDが置かれているだけだった。
「こっちの通路も全部楽屋っぽいな」
「はぁー…これ全部見んのか?」
「全部はさすがに…」
「有名人に会えるわけでもねーし…つーか地図とかねーのかよここ…」
「正門にパンフレットおいてあるかもな」
自分たちが今どこにいるのかもわからないため、あまり動けないのも事実だったため、メンバーは一度受付らしい場所を目指す。
敵を倒しつつなんとか見覚えのある場所にたどり着き、受付らしき場所に置いてあるパンフレットを手に入れて地形を確認する。
するとパンサーが声をかけた。
「ねぇ、やっぱりおかしくない?」
「なにが?」
「なんで誰もいないんだろ…」
「あぁ?いるじゃねーか」
「シャドウも、その、頭がCDの人もいるけど…スタッフも、アーティストもいないのはおかしくない?」
パンサーの言葉に首をかしげる。しかし今までのパレスを思い出すと確かに不思議だと思うことではある。
「ジョーカーとオーディションしたあの部屋だって、本当だったらあの人たちがいてもいいはずでしょ?」
「確かに、班目の時も客人はいた」
「その前も部員の連中がいたしな…」
「ふーむ…確かにおかしい、普通意識していれば自分に関係のある人間の形くらいは認知しているはずなんだ」
このパレスは静かすぎるのだ。
「そもそも、最初に出てきた場所がオーディションの部屋ならあの人間たちはそこに向かうはずだが…」
「ますますあの部屋怪しいな…」
一行は最初に見た部屋に入れる道を探すため、地図を頼りに目指していく。シャドウと会い何度か戦闘になりはしたものの、目的の場所へとたどり着く。
「やっぱり皆迷わず行くな…」
「どこかに隙間ないか?」
「あ、ねぇパレスが変化したから部屋と通路増えてるよ!どこかに行ける道があるんじゃないかな?」
「近場から探すか」
増えた部屋を一つ一つ開けていき中をくまなく調べる。
「ん…」
ジョーカーが何かに気づき一つの壁に近づいた。
「部屋に通気口があるわけないか…」
「めんどくせーから壁とかぶっ壊していかねー?」
「やるわけねーだろ!」
バコォッ!
ガラッガラガラ…
「…」
「ここからなら行けそうだ」
「いやなんで壁壊したんだよ!」
「その前になんで壁壊れんの!?」
「ここだけ、薄かった」
怪盗にあるまじき行為であることにモナは憤慨し、パンサーとスカルは突っ込み、フォックスは関心して、壊した本人はそれらを気にせず先に進むのだった。