連載のブック

□誰もいないパレス
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ナビに案内されて到着したメンバーの前によく見かける畜産の建物が現れた。しかし、木造ではなくコンクリートや石で組み立てられ、窓もほとんどないものだった。

「なん、だこりゃ…」
「畜産の割に閉鎖的だな」

まだ服装に変化はなく、警戒されてはいないようだ。

「とにかく侵入しよう、どこかに入れそうな場所は…」
「窓小せえ…モナじゃなきゃ無理だろ」
「地面も全部コンクリートだし、ていうか入り口どこよ…」

外見的に入り口らしいところはなく。窓も小さく高い位置にあるため、たどり着けても人間がはいるには厳しい小ささであった。

「オーディションをしているんだからどこかで人を入れている場所は必ずあるはずだ」
「つか、その人もどこ…に……」
「スカル?」
「なんだありゃ…」

スカルが指差す場所を見ると認知の人間が多く歩いていた。人間の形をして、頭はみなCDの形をしていたのだ。

「なにあれ…気持ち悪い」
「あれが、やつの認知する人間なのか?」
「気ぃ狂いすぎだろ…」

とても許容できるようなものではなく、全員が顔をゆがめた。そしてその人間たちがいく先を見るとひとつの自動ドアがあった。

「もしかして、入り口?」
「じゃないか?」

そして全員が顔を見合わせてもう一度扉を見た。

「あそこから入るしかなくない?」
「ヤダぜ!!そんなの怪盗らしくねーじゃねーか!!」
「モナ、入る場所が外からじゃわからないから中に入ってから探してみないか?」
「む…むむ…」

怪盗の美学を訴えるモナに対して正論で促すジョーカー。モナもわかっていないわけではないため、それに反論することができなかった。

「警戒されていないなら正面から堂々と入ればいい」
「し、しかたねぇ…」

納得したモナを引き連れて全員扉から堂々と中に入っていった。人に揉まれるようにして入ると中は至って普通の構造であり、家畜がいる檻や柵などがなかった。

「皆どこに向かってあるいてるんだろ…」
「奥になにかあるのかもしれない、流れに沿って歩いてみるか」

波に逆らわずにただし端のほうで一緒に歩いていく。道の途中に窓らしきものをみつけたが大人が通れそうな大きさではなかった。

「ここまで一本道だな」
「部屋らしきものが見つからねぇ…今までのパレスと全然ちげぇぞ」
「畜産自体がそんなに入り組んだ建物じゃないからな」
「あそこ目的地じゃない?」

杏の言葉で全員が奥を見る。大勢の人間がそこに吸い込まれるように一列になって入っていくのが見えた。

「どうする、このまま入るか?」
「どこかいけそうな場所はないか?」
「窓ぐらいしか…」

入口で悩んでいると突然ブザーが鳴り、赤いライトが点滅し始めた。

『スパイ発見、スパイ発見ただちに排除せよ!』
「スパイ!?」
『あそこだ!捕まえろ!』
「嘘だろ!」
「戦っていったん引くぞ!」

警報音と共に服が変わり怪盗になった。全員配置につき、敵を迎え撃つ。

「とにかく適当にあしらって逃げろ!」
『逃がすな!』
「邪魔だっ!」

まともに戦闘はせず逃げることを優先する。一本道のため、迷うことはないが、相手と対峙する機会も多く、武器やペルソナで攻撃して道を開けていく。

「つーかモナ!お前車になれよ!」
「こんなとこでなっても狭くて乗れねーだろ!!」
「あと少しだ!」

入ってきた扉をこじ開けて急いでナビを切る。

「はぁ…はぁ…なんとか逃げきったか…」
「これからどうしよう、侵入できる場所なんてなかったよ?」
「日を改めて探すしかないな」
「じゃー今日は解散でいいか?」
「あぁ」

ともかく侵入ルートをみつけなければならないため、警戒された今日は諦めて明日また入ることを決めた。

「…」

一人、そのメンバーを見つめていたのを誰も知らなかった。






翌日、メンバーは集合してナビを開く。すると今回は最初から怪盗服になっていた。しかしメンバーはそんなことはどうでもよかった。

「オイ!なんだこりゃ!!」
「前回と建物が違う…」

どうでもよかったのはパレスの形が変形していたからだった。コンクリートでできた見た目は変わらないが、窓は鉄格子になり、入口には飼育員らしきシャドウが二対並んで立っていた。

「なんか、前より物騒な感じ…」
「警戒によってパレスごと歪むことがあるのか?」
「知らねえよ!ワガハイもこんなの初めてだ!」

モナも困惑し、状況を飲み込むことで精いっぱいだった。とにかく見つからない場所へ隠れてパレスを見る。見かける畜産の建物だがどうも前回より広大になっているようだった。

「ジョーカー、オマエなら何か入口らしいところを見つけられるんじゃねーか?」
「任せろ」

前回の入り口は正門しか見つからなかったが、今回は鉄格子や機器類が取り付けられているため、もろそうな場所等をジョーカーのみが持つサードアイで探していく。

「……あそこ、換気扇からいけそうだ」
「ならさっさと入りますか!」

ジョーカーが見つけた換気扇が並ぶ一つを指さし、上ってくれといわんばかりに置いてあるプレハブらしきところに上り取り外す。すると簡単に外れた。

「プロペラはどうする?」
「壊す」

壊れているのか回っていないプロペラを自慢の足癖の悪さで蹴り壊したジョーカー。中に警備がいたら即捕まるような行為だが、幸運なことに中に誰もいないようだった。

「たまに豪快だよなぁ…お前」
「入るぞ」





      
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