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□セークーリタース
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「誰だお前たちは」
パレスに入ったら人間が紛れ込んでいた。
簡潔に説明すればこうなるだろう。
「えっと、え?」
「いやいやいやいやオカシイだろ!!?なんで名無しさんがいんだよ!!」
「私達に巻込まれたの!?」
「近くにいなかったはずだ、なのになぜ…」
スカルが名前を叫んだせいで、彼女は敵意をみせ、構えた。
「ばかスカル!!」
「喧嘩しにきたのか?」
「ち、ちがう!誤解だ!」
普段落ち着いているジョーカーが慌てて否定し、メンバーの前に出た。名無しさんは睨みつける。
「俺達は敵じゃない、喧嘩もしない!」
「だが武器はもっている。何が狙いだ」
「これは…自己防衛でもってるだけで」
「細かい説明はあとだジョーカー!今は急いでその子をっ!よけろ!」
モナが叫んだ。名無しさんのうしろから敵が腕を振りかぶっていた。ジョーカーは彼女を抱えてその場から離れた。
「なっ…なにが、アレはなんだ!?」
「後だ!とにかく今は逃げる!」
人命を優先し、怪盗団は走り出す。
「クソッこっちからもきやがった!!」
「あっちだ!」
廊下を走り抜け、一つの部屋にたどり着く。すると、怪盗団は急に膝を付いてしまった。
「えっなにこれ…」
「力が、はしらねぇ…」
「っスカル!いつ脱いだ!!」
「は?いやフォックスおめーなに仮面とってんだよ!!」
「元に戻ってる!!なんで!?」
全員が怪盗服からいつもの制服になっていた。モナに至っては現実の猫の姿である。
「お前たちは…暁!?」
「その…はい」
「何をしているんだ!!いやそもそもなんだここは!!」
「話すと長いんだ!とにかく落ち着いて一緒に逃げてくれ!」
見知った人とわかり、名無しさんは警戒を解いたが説明を求めた。とにかくこの状態ではまともに戦えないと判断し、急いで部屋を出ようとした。
「名無しさん!!」
突然暁が彼女を突き飛ばした。名無しさんは転びはしなかったが急なことで態勢がとれずよろめいた。あとにガシャンと重く冷たい音が響く。
「なにを…っ!?おい!どういうことなんだ!」
「ここから逃げるんだ!見つからないように隠れながら…はやく!!」
「暁を残して行けない!くそっなんだこの檻は!!」
「俺達は大丈夫だからはやく行ってくれ! 」
彼らは天井から落ちてきた檻に閉じ込められてしまった。モルガナが気合で隙間から出ようとするが微妙にひっかかり出れない。
それを好機とばかりにシャドウが部屋に入ってきたのだ。
「罠か…」
「モナはやくでろ!!」
「いまやってるんだよおおおお…」
「名無しさんは逃げて!」
「駄目だ!そんなことしない!!」
「ここは君が闘って勝てる場所じゃない!!いいから逃げてくれ!」
「黙って!!」
檻を壊そうと揺らしたり物で殴ったりするがビクともせず、名無しさんは背後のシャドウに捕まってしまい。檻は床をくり抜き上へとつり上がっていく。
「何!?どうする気なの!?」
「モナ早く抜けろって!!」
「はっ挟まっちまったぁー!」
「テメー!!太ったんじゃねーのか!?」
「あ、あき…っ!?」
そうよ貴方の望みはこんなものではない。貴方の思いは変わらない。
ならばやることはただ一つ、迷いなんて最初からなかったでしょ?
さぁ立ちなさい、護りなさい。
我は汝、汝は我
かつて貴方がそうされたように、貴方が全て守るのよ。
それが貴方との契約だもの。
「っっあああああああ!!」
捕まえていたシャドウが弾き飛ばされた。檻の中でメンバーはそのもがき苦しみながらも覚醒する彼女を驚きつつも見守っていた。
ゆっくりと立ち上がり、顔には布に近い漆黒の仮面が着けられていた。それを名無しさんはわかっていたかのように手をかけて投げ捨てるように引きちぎる。
「護るぞ、セーク!!」
血しぶきは炎になり彼女自身をも包み込む。やがて消えていった炎の中から漆黒のゴシックドレスを纏った少女と、盾と大剣を持ち、彼女に似たゴシックドレスを纏った女型のペルソナが現れた。
「薙ぎ払え!」
大剣で振り回しシャドウを一掃する。名無しさんはその間に檻にジャンプで飛び乗った。
「嘘だろおい!?」
「すまない、この部屋から檻ごと外にでるぞ」
「檻ごとってまさか!」
ペルソナが檻を吊していた鎖を引きちぎり、早急に、しかし優しく部屋の外にだした。
「セーク!」
檻を降ろし、大剣で檻を豆腐のように切り落とした。部屋から出たおかげか、全員が再び怪盗の姿に戻っている。
「名無しさん!」
「状況も状態もなにもかもわからないがここから逃げるんだな?」
「あぁ」
「なら私が切り開く」
「いや、俺達も戦う」
「ペルソナが使えればこっちのもんだ!」
「それに、あなたきっと疲れてるから無理しないで」
「覚醒してそこまで動けることが凄いことだ」
「レディは守るもんだぜ?」
メンバーは彼女を守りながら、共に戦いながら走り抜ける。
「アルセーヌ!!」
「護れ!セーク!!」
彼女のペルソナが重い斬撃を豪快に振るってなぎ払い、他のメンバーは立ち上がる敵をスキルで倒しながら出口へと走り抜けた。
だが敵もおいそれとそれを逃そうとはしない。
「しつっこい!」
「出口まだかよ!」
「…坂本だったか」
「あ!?なんだよ!」
「その武器を貸してくれ」
「は?あっおい!!」
「そこの狐の面」
「俺か?!」
「刀借りるぞ」
二人の武器をするりと抜き取り、全員より前に走りだす。
「道を開けろっ!」
彼女は前方にいるシャドウを踏みつぶし、刀で的確に首や頭を貫いていく。それでも起き上がる者には竜司の鈍器で殴り飛ばしていく。
「あんな奴見たことねーぞ…!」
「なんであんなに強いのよ!ジョーカー!」
「てか!なんか見えそう!あと少しで見えそう!」
「うむ、良い体のつくりだな!」
「あんたらは黙ってなさい!」
ふわふわと重力に従って動くスカートのせいか、それとも彼女の戦闘慣れのせいか、戦い方がメンバーのそれとは違い、鮮やかなものであった。
無駄なく動くその戦闘は誰が見てもすごいという言葉でしかくくれないものであった。
「倒せるなら、私がお前たちを倒す!暁に触れさせはしない!」
「いや、セリフが逆な気が…」
「邪魔だ!」
一人で何十体と相手にしているが、動きは鈍ることなく、出口まで彼らを導き、守り抜いた。
「っぶあっ!!」
「なんとかなった!?」
「…帰ってこれたようだな… 」
「名無しさん、大丈夫……」
恐らくフラフラであろう彼女に手を伸ばしてみたが、逆に掴まれて立たされた。呆然と名無しさんを見る。
「あれ…元気… 」
「確かに多少疲れはあるが別に問題ない」
「嘘だろ…ホントに人間かお前…」
「?なにを言っているんだ?」
仁王立ちする名無しさんはパレスで見たときと何ら変わらない。
「それより暁、説明してくれる?」
「えっ…えっと…」
「話しにくいなら場所を変えよう。どこがいい?」
「いや、今日は疲れたから明日説明を…」
「それは駄目。今すぐして、早く、簡潔に」
「はい…」
このとき、なぜ暁が落ち込んだのか、なぜ彼女が必死なのか残りのメンバーは理由をしるよしもなかった。
セークーリタース
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