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□薄情者
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「名無しさんおねえちゃん!僕、おねえちゃんのこと大好き!」
「嬉しいなぁ、私も好きだよ」
「ほんと?じゃあ僕とけっこんしてくれる?」
「んー…結婚は難しいなぁ」
「どうして!?好きならけっこんできるでしょ?」
「もし暁くんがもう少し大きくなってまだ私を好きでいてくれたらね」
おねえちゃんはそう言って僕のことを子供あつかいした。大きくなったらってどれくらいだろう。早く大きくなりたい。
「ねぇ名無しさんおねえちゃん、大きくなったよ?だから…その…」
「そうだね、前より身長も伸びたし、大きくなったねー」
「じゃあっ!」
「でもまだまだ大きくならないと駄目かなー」
「う、うそつき!大きくなったらって言ったじゃん!」
「私から見れば君はまだまだ子供なんだよー。私より大きくならないとね」
「…絶対なってやるから!」
最初からそう言えって思う。すぐに追い抜いてやるからこいびとなんか作るんじゃないぞ。
「…名無しさんお姉ちゃん、俺、いろんなことを乗り越えたよ。お姉ちゃんの身長も超えたよ。結婚できる年にはまだなれてないけど、恋人にはなれるでしょ?だからさ、付き合ってほしいんだ」
…
「もちろん、結婚前提で…俺はずっと名無しさんお姉ちゃんのこと好きだし、言うこともちゃんと聞いて守ったんだよ?」
…
「返事、聞かせてよ……」
やっとあなたに追い付いたと思ったのに、また遠くへ行ってしまった。もうあなたの声も姿もこれからの未来も見ることはない場所へと。
薄情者