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□美学は体を表す
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怪盗団は悩んでいた。

「あー…」
「うー…」
「何回目だっけ…」
「数えるだけ無駄な数はやられたわね」
「むー…」

全員が全員、メメントスの待合室でうなだれ、悩み、唸っている。いつものような元気はないようだった。

「誰なんだろう、宝箱を開けて回ってるのは…」

ノワールの一言で全員がためいきをついた。最近の出来事ではないが彼らが怪盗団として有名になり始めた頃、メメントスの宝箱があけられているという出来事があったのだ。
そういうこともあるのだろうと、その時は単なる事故として処理されたのだ。しかしこれが続けば流石に怪しいと思ってくる。宝箱は開けられ、おまけにターゲットまでいつの間にか改心されているのだ。そんなことができるのはペルソナ使いだけである。

「黒い仮面のやつかと思ったが、そいつが、わざわざターゲットを改心させる理由もない」
「逆に動かしてるんだからね」
「どのみち、用心にこしたことはないわ、注意してすすみましょう」
「んじゃそろそろ行きますか」

敵なのか味方なのか、そもそも人間であるのかすらわからない。彼らは消えない悩みを抱えつつ次の階へと降りていくのであった。
しかし、この悩みは案外あっさりと解決することになる。



「えっ…」
「人?なの?」

下に降りてすぐのホームの線路、その中心に人影と何かの物が見えたのだ。全員が警戒し、取り囲むように隠れながら配置に移動した。近くによればわかる。あれは人間とバイクである。
それからジョーカーが合図をして一気に全員がその人物と距離を縮め、銃を構える。正面は線路のため、誰もいない。そのためか全員がすぐに撃てるようトリガーに指をおいていた。

「あらー?人が増えたと思ったら物騒なことをするのね?女の子泣いちゃうわよ」

声と喋り方が女性である。少し長い髪が下の方で緩く巻いていた。

「動くな」
「怖い怖い」
「お前が事件の犯人か?」
「事件?一体どの事件の話かしら」
「とぼけてんじゃねーぞ」
「ほんとよ?」

全員がにらみ続ける。彼女は変わらない口調と態度で質問に答え続ける。

「精神暴走事件のことを知ってるかしら?」
「あぁ、突然豹変したとかっていうやつ?悪いけど何も知らないし私は興味ないわ」
「本当かしら?ここで何かを待っていたようだったけど」
「えぇ私は待ってただけ、今日のターゲットに出会うためには待つしかないの」
「それって誰かの精神じゃないの?」
「まぁ誰かのものではあったでしょうね」
「何を企んでいる」
「何も企んでなんかないわよ、ところで、貴方達はここにいて平気なの?」

彼女は振り返らない。真っ直ぐ上面を向いて彼らに質問をした。

「私達をここから追い出そうなんて無駄よ!」
「あらそう?それじゃ一緒に相手をしてくれるのかしら」
「相手だと?」

正面線路から、小さな細かい金属を引きずる音が聞こえ、段々と近づいてくる。皆が聞き覚えのない音に意識を向けた。段々と迫るそれは明らかにいつもの敵と違うもの。メンバー全員が臨戦態勢に入り、冷汗を流した。

「やっと来たのね?もう待ちくたびれちゃったわぁ…さ、早くヤりましょう?」

暗闇からぬるりと鎖とすたれた布に巻かれた巨大なシャドウが現れた。

「なっなななんじゃありゃ!!」
「あわわわわヤバイ!ヤバイぞアレは!!何なんだこの数値!異常すぎるぞ!!」
「こいつが刈り取る者か…!?」

全員その覇気と異常な空気に尻込みし、そこから動けなくなった。その中、囚われていた彼女は一歩一歩と刈り取る者に近寄っていく。

「オイ!なにしてんだよ!」
「まさか、先程待っていた相手とは…」
「さぁ!!楽しみましょう!」

彼女の太ももから短鞭を抜き取り、そのまま戦闘に入った。

「無茶だ!」
「その強さならさぞたくさんのアレをもっているでしょうね…?いくわよぉ!」

高いヒールを軽快に鳴らし、敵に一発をお見舞いする。そこで彼らは彼女の衣装に目を奪われた。

「なんっ!!?」
「ちょっと!何あの服!」
「ナビはまだ見ちゃだめだよ!」

軍服のようなスタイルだが前は開けて谷間が見える。スカートも短く、普通に歩いただけでも見えると思われるが戦闘しているためもろ見えである。その中ですら、面積のないTバックに見える。

「おい!双眼鏡とかねぇか!?」
「スカルキモイ!」
「良い体のラインだ…相当鍛えているな」
「フォックスが言うと生々しいわね…」

男の下の心と下半身を適度に突く衣装に男子高生の皆さんは興奮し、目をそらすことはない。

「あーっもうあんたかったいわね!時間かかっちゃうわ!」

地面に着地した彼女は半ギレで仮面に手を当てる。それは青い炎になり揺らめいた。

「もう本気でイかせてあげちゃう♡ペルソナァ!!」

炎の中から生まれ出たのはこれまた彼女とよく似た服装をした女型のペルソナ。三角木馬の頭に乗り、短鞭を弄んでいた。明らかに危ない道である。

「行くわよぉ!」

ペルソナが短鞭で一振り、敵に殴りかかるように叩く。それを食らった巨体が思い切り横に吹き飛び、壁に激突した。

「すごい…」
「あいつを一発殴っただけでふっ飛ばしやがった!?」

敵もすぐに立ち直り彼女の耐性を無効にしていくが彼女も負けずにスキルを使い自分を補正していく。そしてその技の的確な判断とスピードに全員が唖然とした。

互角に見えた攻防戦は徐々に相手が押され、ついに倒れたのだった。

「さーあ貴方の持ち物を見せて頂戴……って何よこれー!!宝石が一個もないじゃない!信じられない!」
「ほ、宝石…」
「宝石のために倒したっていうの!?」
「それ以外になにがあるっていうの?」

不機嫌そうにアイテムを回収してメンバーに歩み寄る。

「お前は…お前が宝箱を開けていた犯人か?」
「宝箱、えぇ宝石のために全部空けて回ってるわ」

あっさりとした発言に全員がやり場のない気持ちを抱えた。そんな中彼女はジョーカーを見つめて近寄る。ヒールとはいえやや彼より低い身長のためパンサーにも負けないだろう谷間が近くに見える。

「…っなんだ」
「あなた…いい男ね?遠目だとわからなかったけど…んふふ」

するりとジョーカーにすりより、豊満な胸を押し付ける。さらに腰に手を回し足も絡ませてきたのだ。流石にジョーカーも赤面し、思わず腰を引いてしまった。

「ちょっジョーカー羨ましい!!」
「あ、あの!まだそういうのは早いっていうか!」
「っ…な、なんのつもりだ?」
「そうねぇ…ご機嫌直しってところかしら」
「なんっ…!?」

言葉を遮り彼女はジョーカーにキスをしたのだ。それも舌を絡ませる濃厚なもの。突然の出来事にジョーカーが混乱し残りメンバーは唖然とした後、赤面やら内股になるやらいろいろな反応をみせた。

「んっ…んん」
「っは……ぁん…」

あまりにも濃厚な口づけにジョーカーの脳は痺れて自分から求めるようになっていく。しかしそこで彼女は口を離した。

「っはぁ…ふふ、初めて?かわいいのね」
「はぁ、っは、ぅ…」
「機嫌治ったわ、ありがとうステキな怪盗さん」

最後にもう一度頬にキスをすると彼女はバイクにまたがり、エンジンをかけて颯爽と逃げていった。

「はっ!お、オイ!ジョーカーしっかりしろ!」
「………」
「ちょっちょと!な、なん!!……」
「私たちは、何を見せられて…」

モナがバシバシとハリセンでジョーカーの頭を叩くが魅了状態から帰ってこず、ぼうっとしていた。ほかの男子たちにも女子たちが頭を叩いていたが全員が軽い魅了状態だった。





宝箱の犯人と、リーダーが正気に戻らないため今回の探索は打ち止めとなり、現実世界に帰ってきた。流石に暁のバステは治ったようだが、いまだに顔は赤いままだ。

「……なんだろう、大人の世界って感じだった」
「あれが、AVってやつか…?お前らが見てる円盤ってあぁいうのなのか!?」
「俺はもっと軽めのだよ!」
「悪くはなかった」
「サイテー!!」

自爆と恥を知らない男たちは放っておいて、一番の被害者である暁には静かに肩を叩くという行為を送った。

「今日は、解散で……」

小さな声で全員に告げて真っ先に暁が逃げ去った。その背中を見つめて全員はその場で解散した。

「………ふぅんあの人たちなんだ」

その光景を一人の地味な秀尽の女子高生だけが見つめていた。そして最後に走り去った暁の道を見つめてその服装と見た目に似合わない妖美な笑顔をみせたのだった。






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