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□猫
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「暁、暁」
「何?」

服を引っ張られる感覚が後ろからして、振り返ると彼女の名無しさんが見上げていた。それもご機嫌ナナメな顔で。

「昨日の放課後に一緒に歩いてた女の子は誰」

昨日…あぁそういえば双葉の出かける練習に付き合ってたな。そういえばまだ双葉と面識はなかったっけ。

「…だれなの!」
「居候先の娘だ、買い物に付き合ってただけ」
「………ほんとに?」
「ほんと。俺は名無しさんのことしか興味ないし名無しさんのこと愛してるから」
「!!!」

思ってることを口にしたら思い切り胸を叩かれた。すごく痛い。

「だっだれもあんたの気持ちなんか聞いてないし言うな!!」
「今のちょっとキマった…」
「変なこと言うからでしょ!」
「ほんとのこと言っただけ…いっっ!!」

また叩かれた。今度は腕。これがなかなか本気で叩いてくるから痛い。

「うるさいバカ!しゃべんな!」
「わかったわかった…」

ぽこぽこ顔を赤らめながら怒る彼女は可愛い。一見暴力的で一方的なものに見えるかもしれないけど不器用な彼女なりの表現方法なので俺は特に気にしなかった。

「今日の放課後にアイス奢って!もうやだ!!ムカつく!」
「わかった……そのままデートしていい?」
「っっーーー!!そういうの公共の場で言わないでよ!」
「あいた!」

ちょっと見つめて言っただけなのにまた叩かれた。照れてるだけなんだよなぁこれ…。





「名無しさん、アイス食べに行こうか」
「…うん」
「…?」

放課後、彼女と待ち合わせていざ行こうと思ったとき、ふと違和感を感じた。なんなのかはちょっとわからない。

「どれ食べる?」
「…バニラ」
「……あれ、それだけ?」
「そ、それだけ」

…そういう気分なのかな?

「バニラとチョコ一つづつください」
「かしこまりました」

いつもなら遠慮なく三段とか2つとか頼むのに…具合悪いのかな。

「これから何処行きたい?」
「あ、暁の、好きなところで、いい」
「…そう?」

え、この前何か洋服見たいとか言ってなかったかな…あれ?

「…名無しさん」
「何?」
「アイス溶けてるよ」
「えっあっ!」

何か考え事でもしていたのかアイスが溶け始めていた。急いで食べたから鼻についてしまっている。

「じっとしてて」
「んえ」

それをぺロリと舐めとる。うん、甘い。

「………っっ!!」
「あっ…ごめ」
「っっあ、あり、が、とう…!!」

…おかしい。どう考えてもおかしい。

「名無しさん、何かあった?」
「なっなにが?」
「何かあっただろ?誰かに言われたのか?それとも具合が悪いのか?」
「別に…何も…」

明らかになにか隠している様子だった。

「怒らないから」
「…………い、いつも」
「うん」
「殴って、る、から……ほんとは、そんなこと、したく、ないのに…すぐ、手がでちゃって」
「…」
「いつも、暁が痛そうにしてて…だから、今日から、そういうのやめようって思って」

そっか。

「名無しさん、別に俺は気にしてないよ」
「でも…本気で殴っちゃうし」
「確かに痛いけどそれは照れているからだろ?」
「…だっていつも恥ずかしいことする」
「そんなにしてたかな…」

逆に名無しさんが恥ずかしがり屋すぎる気がするけど、言わないでおこう。

「じゃあこうしよう」
「うん?うん!?」

空いてる手を握って恋人つなぎをする。

「こうすれば殴れないし、俺も幸せ」
「あう…あっ…」
「そうやって俺のこと考えて行動を変えようとしてくれるの嬉しいけど、いつもの名無しさんでいいんだよ」

何も変わらない君が現実の日常の中でいてくれることが俺にとっては何より嬉しいことだし安心することなんだ。

「大丈夫、君を嫌ったりしないから」
「っっ!!近い!」
「いてっ!」

しまった、足が残ってた。












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