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□冷水のような暖かさ
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「どけっ!!」

上から叫び声と共に大きな大剣が振り下ろされ、それを受けたシャドウが消えた。

「見事だ名無し!」
「…これで全部か」
「おう、終わりだ!」

ナビの言葉を聞いて武器である大剣を背負い直す。自身の背丈ほどあろうものを軽々と扱っていた。

「相変わらず殺傷能力たけーなお前の武器」
「倒さねばこちらがやられるだろ」
「いや、そうなんだけどよ」

彼女は細身でありながら男でも持つのが大変な武器を扱っている。実際男子組が武器を持ったところ重くて持ち上げるのが精いっぱいであった。

「ナビ、目的地はまだ先か?」
「んー…ここじゃないのは確かだなー」

コツコツと高いヒールを鳴らせながらナビに近づいて聞く。黒のゴシックドレスがふわふわと揺れて男子達は見えるか見えないかをドキドキしながら黙って見ていた。

「まだ先だな!!」
「そうか、モナ」
「まっかせとけー!」

ボフリと音を鳴らせて車に変身してみんなを乗せる。そのさい、ナビは名無しの膝の上に座り、ふくよかな胸に頭を乗せて案内をするのだ。正直男からみたら羨ましいことこの上ない状態である。

「さ、行くわよ」

クイーンが車を発進させる。
車の中では和気藹々と風景に似合わないにぎやかさである。そこでノワールが名無しに質問をし始めた。

「私まだ名無しのことよく知らないの、聞いていいかな?」
「なんだ?」
「ジョーカーと名無しはどんな関係なの?」
「ふぶっ!」

ノワールの純粋な発言にジョーカーが吹いた。

「同じ学校の同級生だっただけだ」
「てことは、わざわざついてきたの?」
「そうだな」
「お前よく来れたな…」

スカルの発言に彼女は平然と答える。

「別に学校に執着はない、ただジョーカーが一人で行かせるのが嫌だっただけだ」
「親の反対とかは?」
「元々学校で問題を抱えていたからすぐに了承してくれた」
「問題?」

彼女の膝に座るナビが彼女の仮面、というより布に近いものをずらす。

「名無しは前の学校で番長だったんだ」
「は!?」
「いや、私はそんなつもりはないんだが」

話によれば、ジョーカーに変に絡んできた連中をボコボコにしたのが始まりで、徐々に彼女に喧嘩を吹っ掛ける連中が増え、買わないとジョーカーが絡まれるという堂々巡りが出来上がり、そのせいで番長と言われるようになってしまったらしい。

「ジョーカーって…不幸体質?」
「…否定できない」
「しかしこの喧嘩も今では役に立つ。悪い経験ではないな」
「まさか、その武器を振り回してるのって…」
「ついたわよ」

目的の場所に到着し、全員が気合いを入れ直す。全員が車から降りて相手に直面した途端、問答無用で攻撃をしてきた。

「っぶねー!!なんだよあいつ!!」
「話を聞く状態じゃないわ…すぐに体制を整えて!ジョーカー!」
「あぁ…っぐ!」

メインメンバーで戦闘に入ろうとした時、相手がジョーカーに先手で攻撃をしてきたのだ。防御もできずそれを直撃した彼は後方まで吹き飛ばされる。飛ばされた体は地面にぶつかることなく、人間の手によって受け止められた。

「っ…名無し…?」

高いヒールで地面を強く踏み、ゴシックドレスのスカートをふわりとたなびかせた名無しが彼を抱きかかえて仁王立ちしていた。

「…無事かジョーカー」
「あぁ、なん…って!」
「そうか…すまない私がもっと早く動けていれば…」
「それどころじゃない!お、下ろしてくれ!」
「?しかし怪我が…」
「いいから!大丈夫だ!!」

今の体制はいわゆるお姫様抱っこである。女が男をだ。

「わかった、無理ならすぐに言うんだぞ」
「あぁ…」
「ではしばらく待っていろ」
「え?」

彼を優しく下ろしたあと、彼女は足にエンジンでもついているかのようなスピードで一気に敵シャドウに近づいて自慢の大剣で敵を吹き飛ばした。

「ちょ…名無し?」
「勝手に一人で!」

メンバーが叫びすぐに応援に向かう。それに気づいているのかいないのか名無しさんはどんどん敵を奥へ奥へと怒涛の勢いで追い詰めていく。

「お前を楽に死なせはしないっ」

激しく大剣を振り回して徐々に相手の体力を奪っていく。相手も攻撃をしているが名無しはすべてかわし防いでみせた。だが、防いだと同時に上へと打ち上げられてしまった。

「名無し!」
「…ジョーカーは」
「は」
「おい中見え…」
「私が守る!!」

空中で体制を整えて天井を蹴り飛ばし、大剣と共に敵めがけて一直線に激しく落ちた。砂埃が舞い、モルガナはころりとひっくり返る。その煙の中から大剣を持ちながら跳躍して名無しがメンバーの前に着地した。

「すまない時間がかかってしまった」
「ブッ」
「スカル下品!」

スカルが鼻血を吹き出した。フォックスも天を仰いで頭に手を置き「良い光景だった…」とつぶやき、ジョーカーは顔を下に向けてしゃがみこみ、モルガナは顔を赤くしてそっぽを向いていた。そんな男たちを無視して女性組は彼女のスカートの中に対しての疑問をぶつけた。

「ちょっと名無し!!何よその下着!!」
「下着?」
「す、スカートの中が…あぁああぁあ…」
「ちょ、ちょっと面積がなさすぎじゃない?」
「面積?」
「本当に大丈夫なの?」
「何がだ」

彼女のスカートの下着のことを伝えると名無しは事もなげに答えた。

「これか、動きやすくていいぞ」
「そうじゃない!!」

今にもぺろりとめくりそうな彼女。それをお母さんよろしくパンサーが手を握り、ナビが裾を下に引っ張る。

「お、お尻とか…その、丸見えだったよ…?」
「ギリギリに見えたけど…」
「戦闘に有利なら別にいいだろう」

女性組のお説教は続き、男子組は必死にいろんなものを抑え込んでいた。






冷水のような温かさ






「ねぇ名無し、どうしてジョーカーをそんなに守ろうとするの?」
「…私は彼に救われた、一生かけても返せない恩をもらった。だから私は彼を守ろうと思った。それが私の戦う理由であり信念だ」
「そうなんだ」
「もっとも、本人は覚えていないだろうがな」

彼女はふわりと、優しく微笑んだ。







お願いチャンネルより

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