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□彼は彼女を駄目にする
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※大学生同棲
「おはよー」
「おはよう」
「あれ、起きてたの?今から朝御飯…」
「もう出来たよ」
こいつはまた…
「じゃあ洗濯」
「今洗ってる」
「…」
「顔洗ってきなよ」
にこにこと笑って彼は言った。その子供を見守る顔やめろ。することがないのでおとなしく顔を洗いにいく。戻れば机にきれいに盛り付けられた朝食たちがすでに並んでいるだろう。
「いただきます」
「召し上がれ」
ぱくりと一口食べれば、美味しい。美味しいのだ。腹が立つほどに。これで不味ければ私が作れる口実になるのに美味しいから文句も言えない。
「味は大丈夫?」
「たいへんおいしゅうございます」
「よかった」
暁もご飯を食べる。なぜだ、その姿すらかっこよく見えるのは。ムカつく。好き。
「今日バイト何時?」
「夜、夕飯は大丈夫」
「…そう」
「あ、お弁当作ってあるから名無しさんはそれ学校に持って行って。あと夕飯は朝の残りで悪いけど冷蔵庫に入ってるから」
「さいですか…」
この男はどこまで私に仕事をさせない気なんだ。そうしたら丁度洗濯が終わる音が鳴った。よっしゃこれだ!!
「洗濯干してくる!」
「名無しさん」
「なに?」
「今日一限からだろ」
…。
「干す時間くらいあるわ!」
「そんなこと言って干したら前遅刻したじゃないか。単位落とすぞ」
「いったーー!!今すごく心に刺さった!!」
大学生に単位落とすの言葉は禁句だバカ!!いやこいつも大学生だった!なんで同学年なのにこんなに余裕なんだ!!
「ほら、早く行ってきな。俺がやっとくから」
「きーっ!暁のばかー!!」
なんともやりきれない気持ちをぶつけて私は家を出た。弁当はちゃんと持った。
「くっ…洗う必要がない物に入れやがって!」
夜言われたとおり冷蔵庫を開けて中をみる。たしかに朝の残りが少しアレンジされて残されていた。使い捨てタッパの中に。ほんと家事させろ。いや割と真面目に。
「これで美味しいからほんとむかつくーー!!」
私と暁が付き合い始めたのが高校生の時。その時は普通にデートもしたしお弁当も作ってあげた。大学生になり、彼の希望で同棲し始めてから暁がなんでもやってしまっている生活がスタートした。
「私同棲してから家事なんてやったかな…」
朝食は作られ、洗濯もやられ、掃除なんかは普段からちょくちょくしてるせいかやることもなく。お昼もお弁当。夜も作り置きか作られている。買い物も彼の学校帰りかバイトで行かれているため買う必要がない。
私は何をすればいいんだ。
「やってることって言ったら家賃と光熱費のワリカンぐらいだし…」
これでも私がゴリ押ししてもぎ取ったものだ。暁は最初から全部払うつもりだったから一人のバイトじゃ無理だろと怒ったが
「高校の時、死ぬほど貯めたから問題ない」
と謎の言葉とキメ顔をされた。嘘だと思ったが通帳の一つを見せてもらったら目が取れるかと思った。
もう一度言う。通帳を一つだ。
「ごちそうさまでした」
ゴミになってしまったパックを捨ててお箸は洗う。洗えたぞ。そのままお風呂に入りテレビを見ながら携帯を覗く。そろそろ暁が帰ってくる時間だ。
「ただいま」
「おかえりー」
カチャリとドアを開けて暁が入ってくる。うお、なんか花束もっとる。
「なにそれ」
「いや、バイト先で…もらっちゃった」
「…誰から?」
「女の子…中学生くらいの…」
「…ロリコン」
「ちがっ」
そうね、あなたは家事も仕事もできておまけに顔も性格もいいもんね。ケッ!
「断れないだろ」
「そうねそうね断れないわね」
「彼女いますって言ったから」
「でももらっちゃったのよねふーん」
「俺名無しさん以外に興味ないよ」
「そうですかそうですか」
完全にめんどくさい奴だ私。でも仕方ないじゃん女の子から貰ったなんて聞いたらさ。
「ごめん、もう貰わないから」
「貰ってきなよ相手が可愛そうだし」
「名無しさん〜…」
普段見せない情けない顔。ふふん、ざまぁみろ。
「どうしたら機嫌なおしてくれる?」
「私に家事をさせてくれたらなおしてあげる」
「えっ…うーん」
なんで悩むんだよ。アレか、私の料理は美味しくないってか。洗濯畳むのも下手くそだってことか?
「…なんで暁は私に家事をやらせてくれないの」
「だって名無しさんの世話したいし」
「いやあのね…」
「名無しさんのこと一生面倒見るし結婚するし墓も一緒に入る」
「重い…」
たまに暁の愛情が斜め上をいってるんじゃないかって思う。いや、いってる。絶対に。
「そしたら暁が大変じゃない!」
「大変じゃないよ名無しさんのこと好きだから」
「んんんんそういうこと今求めてない!!」
好きとか言われても嬉しくないし機嫌なおさんからな!!
「いいんだ、名無しさんはそのまま俺の側にいてくれれば」
「っ…」
その本当に幸せそうな顔を見せるのは反則だと思う。私だって、暁が側にいてくれればそれでいい。それだけで幸せなんだ。でもね
「家事は半分やらせろせめて!!」
「えー!?」
それとこれとは別の話なの!!
彼は彼女をダメにする