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□秘密の中身
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日曜日、暁はこの日が好きだった。

「暁ー!!いこ!」
「あぁ」

暁の恋人である名無しさんとデートの日と決まっていたからである。緩む顔を引き締めて名無しさんの返事に答えて付いて行く。

「今日は何処に行く?」
「えっとね、原宿の…」

彼女は行きたいところを次々にあげていくがさすがに一日で回れる数ではない。

「うーん!どこいけばいいかな⁉」
「まず、一番欲しいものは何だ?」
「えっ…えーと…」

興奮する彼女へ一言。そうするとやはり悩む。

「え、えと…ちょっとまってね!歩きながら決めるから…!!」
「あぁ」

おそらく目的地につくまでにその思考はどこかへ行ってしまうだろうけど。








電車にゆられて、名無しさんの話を聞いて。目的地に付く。

「よーし買い物…あれ、なんか、忘れてるような…」
「結局どこに行くんだ?」

改札を抜けて再度彼女に声をかける。

「あーっ!!それだーー!どーしよまだ決めてなかった!!」

やっぱりね。

「ごめん暁!今決める!すぐ決める!!」
「あぁ」

腕を組みもやもやと考え始める。それを楽しく眺めていると、ふと駅から見覚えのある姿を何人か見かけた気がした。

「決めた!!靴とアクセ見に行こう!それから…暁?」
「っあ、決まった?」
「うん、靴とアクセ…どうかした?」
「いや大丈夫だ」

きっと見間違えたんだろう。





「あれー?暁じゃん?」
「あらほんとね」
「わぁ、偶然だね!」
「おー!」

見間違えじゃなかった。
怪盗仲間の女子組が揃って遊んでいるとこに出くわすとはっ…

「何何?買い物かなにか?」
「いや、まぁ…」
「?後ろの子は?」
「あっえっと…」
「…暁、知り合い?」
「知り合いっていうか、学校が同じ…」

どうしよう、男組ならまだしも女子組だ。ここで変に誤魔化しても怪しまれるしかと言ってホントのこと言うのも…。

「ほっほーん??もしや、カノジョか?」
「えっ!?いやちがっ…えーと…違いが…」
「初めまして、私は奥村春。貴方は?」
「初めまして、名無しさんです…」

こっちはこっちで挨拶し始めてるし!

「うっそ!彼女いたの!?」
「違う違う!たまたまそこで会った友達で…」
「動揺しすぎじゃない?怪しいわね…」
「だってそうだろ?友達なのに恋人なんて誤解されたら、それは、驚きもするだろ?」
「なーんか私らと遊ぶときより、気合はいってね?」

くそっ!男ならそんな細かいところ見ないだろうに!とにかくなんとか、なんとかしないと…。

「今日は!好きな女優さんが来るっていうから…」
「そんなイベント何処にもないからなー?」
「たまにはカッコよくキメないと、だらしなくなるだろ…?」
「これ雑誌で取り上げられてたヤツだよね?ガチ目の」
「えっと…」
「で、本当のところはどうなの?」

無理だ。

「あの…彼女、です……」
「あら!素敵だね!」
「何よいえばいいじゃない水臭いんだからー!!」
「りりりりりりリア充ダーーー!!爆発しろ!」
「どうして、隠したりしたのよ」

だってさ…

「言ったら、いろいろと気を使われそうだから」
「まぁ、その配慮はあるかもね」
「ていうか同じ学校?こんなかわいい子見たことないけど」

言ったら真には説教じみた事されるし残りは名無しさんに興味津々だし。

「あの、もしかしてドクモの高巻杏さん…?」
「え、あーそうだね」
「あちらは生徒会長の新島真さん?」
「ええ」
「こちらは奥村春さんってことはオクムラフーズのご令嬢…?」
「ん、そういうことになるよね」

あ、ヤバイ名無しさんの顔が不貞腐れて…

「暁ーー!!なんでこんなすごい人たちが友達だって言ってくれなかったのーー!!!」
「違うんだっこれは…」
「学校じゃぜんっぜん会ってくれない事情ってあんたが前科者で迷惑するからってことじゃなかったのー!?」

それもあるけど!!なんで知り合ったかなんて聞かれたら答えに困るしなにより男組に会わせたくない!
真!察してくれ!!

「…はぁ、名無しさんさん」
「へっはい!!お見苦しいところを!!」
「彼も悪気があったわけじゃないわ、許してあげてもらえないかしら?」
「でも…暁、どうやってこの人たちと友達になったの?」
「高巻さんは同じクラス、生徒会長の私は彼が前科者って意味で少しね。あぁ、今は彼のこと犯罪者なんて思ってないわ。奥村さんは私の友達だからたまたまね」
「そ、そうなんですか…」

流石参謀、頼りになる!!

「こっちの女の子は?」
「ヒッ!!わわわわ私は!こ、こいつの居候先のむ、娘だ!!」
「なるほど…」

少し顔を赤くして他人に娘だと言い切った双葉。あとで惣次郎さんに報告しよう。きっと泣く。

「そんなことより!!名無しさんさん私達と友達にならない!?」
「はえっ!?」

流れを察した杏がわざとらしく名無しさんに言ってきた。

「だって暁の彼女でしょ?学校も同じらしいしこれから隠す理由もないんだから別に平気だよね?」
「そ、そうなの…かな?」
「それにさ…彼氏の暁の話聞きたいし」

そっちが本音だろ。

「というわけではいチャットの交換お願い!」
「はっはい!!」
「それなら私も」
「あ、私もしたい!」
「わた、わたしともしろ!!」

怪盗だってことがバレなきゃ、いいか…名無しさんも嬉しそうだし。

「それじゃまたねー!」

チャット交換と少し話をしてから女子達は去っていった。名無しさんはポカンとしつつも携帯を握って嬉しそうだ。

「なんか、すごかった…」
「…隠しててごめん、名無しさんに迷惑かけたくないのは本当だし、その…」
「…いいよ、暁が言いたくないなら…」
「名無しさん…」
「今度なにか奢ってくれるなら」
「あぁ、うん、だよね…」

ほっこりした気持ちが沈んだ。まぁ俺が悪いんだから仕方ない。

「これからどうする?」
「…ごはん食べて考える」

きっとその考えはまたなくなるんだろうな。






秘密の中身






「ところで暁、名無しさんって学校でどんな格好してるの?」
「ん、こんな感じ…」
「えっ!?地味!!どうやってあんな変身できるわけ!!?」

後日、名無しさんによる化粧講座が開かれたらしい。






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